スポーツ史上最大の番狂わせは偶然ではない
本書は2015年ラグビーワールドカップにおいて「スポーツ史上最大の番狂わせ」を成し遂げた日本代表を率いた元ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏のメッセージ集です。
できればたくさんの指導者に読んでほしい良書。気持ちって本当に大事です!
彼が就任した当初、ある選手は言ったそうです。
「日本人は農耕民族なんです。ラグビーは狩猟民族のスポーツです。そもそも日本人には、合わないんですよ。」これには、さすがの私も吹き出してしまいました。
彼はマインドセット(心構え)が大事であることを知り尽くしているため、徹底的に鍛え直し始めます。
スポーツは、身体的なものによる部分が大きいと考える方が多いかもしれませんが、実際は、そうではありません。考え方や姿勢など、精神的なもののほうがずっと大きいのです。
心技体。
体のハンディをはねのける「ジャパン・ウェイ」のはじまり。
本書の目次
- はじめにーマイナス思考を捨てれば、誰でも成功できる
- 日本人独自のやり方で勝つ
- どう戦略を立てるか
- 何が勝敗を分けるのか
- 成功は準備がすべて
- おわりにー部下がリーダーを超える時
目標とスケジュール
目標を立てずに始める人はいません。
目標はとても大事なものです。
そして一度設定するとむやみやたらに修正するものではないということは皆さん百も承知です。
スケジュールも同じく立てない人はいないでしょう。
スケジュールを絶対視する指導者も少なくありません。
けれども、彼は言います。
スケジュールを固定し、それをこなしていくというやり方のほうが、はるかに有害です。
スケジュール通りに行動することが目的化してしまえば本末転倒なのです。
ハードワークの意味
物事に懸命に取り組むことを、「ハードワーク」と言います。
「ハードワーク」は、日本語で言う「頑張る」とは、少し意味が違います。
100パーセントの努力を傾けることと、それに加えて「今よりよくなろう」という意識が必要です。
その意識がなければ、頑張りは無駄になります。
向上心のない努力は無意味であるとエディー・ジョーンズは言い切ります。
努力は身体的なものと精神的なものが共存して、初めて実りあるものになります。身体的、物理的な努力だけでは、意味がありません。精神的な努力が伴って、はじめて有意義になるのです。
これはスポーツに限らないことだと思います。
仕事においても学習においても当てはまるでしょう。
気持ちが入っていない限りは時間の無駄。
むしろ、やった気になっていたり、中途半端な実績が積み上がるので、やらないほうがマシ、となります。
準備が全て
私はどんな事でも、成功は、準備がすべてだと思います。
このフレーズが本書を読んでいて一番しみました。
勝つためには、準備をしなければなりません。スポーツはもとより、ビジネスでも競争相手がいます。どんな事でも、成功とは、相手に勝つことにほかなりません。勝ちたいなら、相手を上回る準備をするしかないのです。
準備をしないとは勝つ気がないということです。
戦う意志のないものはリングに上がるべきではありません。
欠点とは一つの条件
欠点を欠点ととらえるか、ただの条件と考えるかが、勝利や成功への大きな分かれ目になるのです。
これはぜひ就活生や受験生に届けたい言葉ですね。
単なるポジティブ思考ではなく、極めて実利的な考え方として受け止めてほしいです。
努力は100%
努力は、100パーセントのものでないと、意味がありません。80パーセントや、50パーセントのものなど、そもそも努力ではないのです。
部下がリーダーを超えるとき
南アフリカ戦において残り2分を切ったところで日本は3点のビハインド。
コーチボックスからエディー・ジョーンズは「テイキング・スリー(3点でいい)!」と叫びます。
キックで3点を奪い同点にして上出来だと考えていたそうです。
選手はコーチの言葉を無視してトライを狙うためにスクラムを組み始めます。
私は苛立ち、無線のヘッドセットを外して、投げつけた。もうどうしようもありません。
そして世界を熱狂させた大逆転劇が起こります。
彼らは勝ちにいきました。
ジャパン・ウェイを貫くことを決めたのです。
本当の成功は、部下がリーダーを超えた時に起こります。
自分で考えることをトレーニングしてきた彼らは最後の最後にほんとうの意味において、「自分で考えること」を「コーチの考えたこと」よりも優先し、実行したのです。
選手は最後、私の指示を無視しました。そして、自主的に状況判断をし、勝利を得たのです。
あらゆる意味で、嬉しい悲鳴が響き渡りました。