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「mellow」告白は常に自分勝手で透明感に溢れている

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恋愛のドロドロが描かれている恋愛映画が苦手な人のために

出典:公式サイト

2020年の1月に公開された本作は今泉力哉監督による不器用な片思いたちの物語です。

田中圭を主演に迎え、非常に穏やかな時間が流れる良作です。

人を殺したり、殺されたりの刺激的なムービーに疲れた方はぜひご覧になってください。

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優しい気持ちになり、癒されること間違いなしです。

以下、内容に言及しますので、あらかじめご了承ください。




ストーリー

出典:公式サイト

以下、公式サイトより引用します。

オシャレな花屋「mellow」を営む夏目誠一。独身、彼女無し。好きな花の仕事をして、穏やかに暮らしている。姪っ子のさほは、転校後、小学校に行けない日がたまにある。そんな時、姉は夏目のところにさほを預けにやってくる。

さほを連れていくこともある近所のラーメン屋。代替わりして若い女主・木帆が営んでいる。亡くなった木帆の父の仏壇に花を届けるのも夏目の仕事だ。

常連客には近くの美容室の娘、中学生の宏美もいる。彼女はひそかに夏目にあこがれている。

店には様々な客がいて、丁寧に花の仕事を続ける夏目だが、ある日、常連客の人妻、麻里子に恋心を打ち明けられる。しかも、その場には彼女の夫も同席していた…。

様々な人の恋模様に巻き込まれていく夏目だが、彼自身の想いは……。

主人公の夏目誠一に田中圭、ヒロイン古川木帆役には岡崎紗絵がキャスティングされています。

女優陣は、子役の白鳥玉季さんを含め、誰もが魅力的です。特にヒロインの岡崎紗絵さんは輝いています。その存在感は昭和の名女優、芦川いずみを彷彿とさせます。これからの活躍が非常に楽しみです。

告白というエゴイズム

出典:公式サイト

本作の主題は「恋愛における告白」です。

あなたのことが好きですという心情の吐露は、告白される側の気持ちが一切考慮されることはありません。

なぜなら、相手の気持ちを考え、好意を告げることそれ自体が迷惑であると想定されるのであれば、告白そのものは決してなされるべきではないからです。

告白は、両想いでない限り、常に厄介な代物であると言えます。

告白の前後において関係性(距離感)が変化してしまうからです。

多くの場合、告白した側の勇気が斟酌され、相手を傷つけない断り方に非常に苦慮する始末です。

この意味において、告白はとても自己中心的・自己満足的な行為に他なりません。

そのことを象徴的に表現しているシーンが、花屋の常連客である青木夫妻とのやりとりとなります。

夏目の気持ちとは一切無関係に、自らの理屈だけを主張する妻青木麻里子(ともさかりえ)と無条件に妻を擁護する夫の振る舞いは、告白する者の理不尽さを余すことなく観客に伝えることでしょう。

ラーメン店の店内で別れ話をする冒頭のカップルのシーンも、ある意味、告白の身勝手さを表していると言えます。相手の立場(気持ち)を一切考えない、最後通告のような「別れよう宣言」は、告白と全く同型なのです。

告白の清々しさ

出典:公式サイト

どこまでも独善的行為である告白は、それが青春という舞台でなされるのであれば、非常に清々しい香りを放ちます。

夏目を慕う、近所の美容院の娘、浅井宏美(志田彩良)は叶わぬ恋と分かっていながら、夏目に自分の思いを伝えます。

お約束のように「ごめんなさい。でもありがとう。」という言葉を返されます。

告白しないでいることの辛さに耐えかねた末の「好きです」という表明は、予想通りの結末に回収され、晴々とした顔と安堵の顔の二つを形作る役目を果たし終えるのです。

出典:公式サイト

宏美に憧れる部活の同性の後輩(松木エレナ)からの告白にも同じことが言えます。

宏美に憧れる別の後輩からも美容院の前で告白されるシーンがリプレイの如く繰り返されます。

どれもが、気分スッキリとした晴れがましさの余韻を漂わせます。

自分の気持ちが相手に伝わり恋愛が成就することよりも、むしろ自分の気持ちが成仏することが目指されたかのようなこの一連の告白は、あらかじめ失敗が約束されているがゆえに清々しさしが匂い立つようなのです。

本作の底に流れているのは、固定概念(既成概念)に対する反発(違和感)です。ラーメン屋なのに若い女性が営んでいる、男性なのに花屋という設定に象徴的なように、女性が女性を好きであることや学校に行かないことの当たり前がごくごく自然に描かれています。

工夫された告白

出典:公式サイト

十代の輝く季節においては、清々しさを身に纏う告白も、それが大人たちの場合は相当に生臭いものになりかねません。

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そのために、夏目のことが好きである木帆が留学前にどのような形で告白をし、いかに演出されるのかを見ている最中に現在進行形で気になりました。

演出は実にスマートになされます。

木帆の父親である左近(小市慢太郎)から手紙を託されていた夏目と対を成すように、木帆は夏目に自らの思いを綴った手紙を手渡すのです。

それぞれの手紙の内容が交互に表現されます。

想いが絡み合い、美しい言葉が並べられるシーンはクライマックスにふさわしい素晴らしい演出です。

想像させる告白

出典:公式サイト

夏目は中学生(あるいは高校生)の時に、花屋の娘に告白した経験を持ちます。

フラれた理由が、告白の際に添えられた花束が他所の花屋で買ったものであるという相手の言葉を今も信じています。

真意の程は描かれていませんが、その教訓は今回の木帆への告白時にきちんと活かされます。

彼は自分の店の花々で編んだ花束を持って、店先に立つ木帆と正面から目が合うところがラストシーンになります。

自分のために花が必要な時に花屋が自分の店のものを使う。これを当たり前だと言えば全くその通りです。でも、今度きちんと告白するときは、自分の手で(自分の店の)花を束ねようと考えたために夏目は花屋になったという想像は飛躍しすぎでしょうか。

映画の中では、主人公の告白はなされません。

正確に言うと、彼の言語化された(しようとする)思いをスクリーン上であなたは聞くことができません。

しかしながら、

彼がセレクトした花の「白さ」がこれからなされるであろう告白の内容を雄弁に物語っています。

諦めていた自分の夢に向かって留学を決意した木帆に対するカラーメッセージがここにあります。

決して遅くはない。自分の人生はこれから自分の色に染めあげていけばいいのだ、と。

機会があれば、ぜひご覧ください。一度見た方ももう一度ご覧になってはいかがでしょうか。

タイトルである「mellow」という語の意味は「熟す」が第一義です。これは、木帆が自分の夢に向き合う機が熟したことと同時に、これから先、二人の愛が熟していくためには、留学期間を含めそれなりの時間が必要であることを示しているのでしょう。

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