日本映画に対する着実な貢献
「新しい地図」の構成メンバーである、香取慎吾氏、稲垣吾郎氏、草彅剛氏の3名は、近年それぞれに映画で主役をつとめましたが、どれも第一級のエンターテイメント性を獲得する作品として高い評価を得ています。
「人生の正午」を過ぎた彼らのキャリアにふさわしい作品ばかりであり、実生活上の人生とスクリーン上の人生がいい塩梅で交差する時期に撮られた充実した作品群であると言えます。
「凪待ち」という希望
香取慎吾主演
2019年に公開されたギャンブル狂いのダメ男の物語です。
主役の香取さんは、落ちるところまで落ちきらない人間が持つ最後の光を丁寧に演じています。
「半世界」という希望
稲垣吾郎主演
2019年に公開された偏屈な男をめぐる友情が描かれた作品です。
何かに苛立ちながらもそれをただ受け入れることでしか押し返せない主人公は全くの他人事ではないはずです。
「ミッドナイトスワン」という希望
草彅剛主演
2020年に公開された、トランスジェンダーに正面から向き合った問題作です。
主演の草彅さんは日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝きました。
こじらせた人生
三作品の主人公に共通するのは次のような特性(境遇)です。
- 人生に行き詰まっている
- 不器用な生き方を曲げられない
- 大切にしたい(してくれる)人間がそばに居る
色々なことがあって、現在「新しい地図」として活動している彼らだからこそ演じることのできる役柄であるとあらためて思います。
注目すべきは、このような難役を妙な力みもなく、ごくごく自然に演じ切ることのできる役者としての彼らの力量です。
同時に、年齢的な成熟がスクリーン上での説得力を与えているのでしょう。
どこにもいけないの先へ
彼らが演じる主人公たちは、世間的な価値観からは手放しで幸福であると断言できない境遇にいます。
けれども、映画は彼らの不幸をテーブルの上に載せるだけに終始しません。
希望の光が微かに遠方に兆していることを示唆しながら物語は幕を閉じます。
「光」は自分ひとりで見つけたり、求めたりするものではなく、周りの人間と向き合うことでしか辿り着けないことがはっきりと描かれているのです。
「新しい地図=希望の光」はあなたの目にだけ映っているわけではないことを映画はきちんと教えてくれます。
あなたの人生には、あなただけしかいないということはありません。
あなたは決してひとりではないのです。