「サイン・シャネル」を見終わった。ため息しか出ない
ものを作る現場の厳しさと喜びが縦横無尽にそこには描かれていました。
服飾に関わる人もそうでない人も見れば震撼するでしょう。
時々、プロフェッショナルの仕事を見たくなります。
素晴らしいドキュメンタリーでした
ものづくりの誕生
この作品は、オートクチュールのコレクションに関するドキュメンタリーです。
デザイナーのカール・ラガーフェルドが構想した時点から、ショーの打ち上げまでが、アトリエでの作業を中心に描かれています。
職人の世界
ここには、プロフェッショナルしか登場しません。
カール・ラガーフェルドのデッサンを渡された瞬間から、アトリエは動き出します。
紙切れ一枚に描かれたデッサンとわずかばかりのコメントを頼りに、アトリエ主任を中心に、デザイナーが何をこの世に生み出したいのかを読み解いていき、形にしていくのです。
よくもまあ、あれだけの情報量で服が作れるものだと思います
私のような素人から見れば、できあがった洋服は共作としか名付けようのない、関わり度合いなのです。
一を聞いて百を知るを実現する、そのイマジネーションとクリエーションの圧倒的なレベルの高さにまずは脱帽するしかありません。
職人の苦悩と栄光
あるアトリエ主任は言います。
仕事の魅力は困難。
やり直しが幾度となく繰り返され、絶望的なまでの時間との戦いがショーの当日まで続きます。
ある者はため息とともに吐き出します。
変更は正しいと信じるしかない。
ここは、ビジネスパーソンであれば、誰もが頷くところでしょう。
そう、下された命令は最善であると思い込まなければ、やってられないのは一度や二度ではないはずですよね
職人の中の職人
魅惑的なアトリエのスタッフとともに、極めて個性的な人物が登場します。
ガロン職人のマダム・プージュー。
御年、75歳。
生前のココ・シャネルを知っている伝説の一人です。
極めて偏屈で強情そうなこの老婦人は唯一無二の技量を持ちます。
その口から漏れる言葉の数々が、いちいち含蓄深く、心に染み入ってくるのです。
ポイントは、ちょうどいい加減でひっぱること
この塩梅がわかるためには、平気で十年や二十年が吹き飛んでいくのでしょう。
不可欠の人間なんていない
自分の現在のクオリティーや方法論など、あと数年もすれば誰かに追い越されてしまうと簡単に口にします。
嘘でもいいから、言ってみたいものです
一日2時間の睡眠で15日間ぶっ通しで、依頼された仕事を仕上げます。
職人は、「人は多くの思い込みにより自ら制約を受けているものだ」と言いいます。
既成概念の奴隷であってはならないと。
グレイトクリエイターのこの言葉は、どこまでも重いのです。
自分を超えるということ
この作品からわれわれが学ぶべきことはいくつもあります。
わたしには次のたったひとつのことで十分です。
自分の限界は自分で決めるものではない。
評判通りのいい作品でした。