ファッション好きならば見るしかありません
アナ・ウインターがモデルと言われる本作品を制作後十年遅れで見ました。
110分間という長さがなんとも心地よいです。
恋に仕事に頑張る女性の等身大をきらびやかなファッション界を舞台として、大いに共感を獲得した作品です。
それにしてもアン・ハサウェイの躍動感が素晴らしい。
プロとして
次なるステップの扉を開くために、不本意ながらアシスタントを続けようという主人公は、周りの人達との関わりを通じて自らの甘ちゃんぶりに気付かされます。
そう、いつもいつも被害者ヅラ意識が抜け切らないことを。
なので、どこまでいってもアマチュアリズムが全面に出てしまいます。
そのことを恋人にもそしてボスであるカリスマ編集長にも見抜かれ、指摘されます。
他責と自責
彼女は状況や結果の説明の際に「仕方がなかった」と口にします。
しかしながら、彼女にとって近しい人、重要な人物たちはそのことにノンと言うのです。
そこに、あなたの責任の余地は皆無であるのかと。
プロフェッショナルである限り、他責は一切口にはできないはずでしょう。
決断とは
パリを走る車中にて、ボスは主人公に言います。
あなたは自分のために決断ができる。
これは言うまでもなく褒め言葉です。
自分のために決断できるとは自らの欲望に忠実であるという意味では当然ありません。
決断とは、一から十まで自己責任を伴うものであるために、徹頭徹尾自分のためになされなければならないという意味です。
仮にそこに少しでも他責の意識が交じるのであればそれは「決断」ではなくなってしまいます。
主人公は、この世界では自責を貫くことができないことを知り、自らが立つべきであるジャーナリズムの世界に向かう決心をします。
遠距離恋愛の予感をはらみながら、希望の職場で出発しようとする彼女の足取りは自信に満ちています。
実に小気味よく、力強い闊歩により物語は閉じられます。
彼女の口から「仕方がなかった」はもう二度と漏れることはないのでしょう。