実際、「印南さんの書評が出ると、アマゾンでの売り上げが激増するんです」!!
ウェブメディアを中心に多くの書評を発表する人気書評家であり作家でもある印南敦史氏は言います。
でも実際のところ、書評に関するあれこれは、意外と多くのことに応用できるものでもあります。
なぜなら、書評を書くとは、少なくとも次の事柄に関わってくるからです。
読み方・書き方・選び方・考え方
これらが、書評家以外のあらゆる仕事にとって重要なファクターであることは、あなたの方がよくご存知ですよね。
多様な仕事に携わる読者の方に役立つ、ちょっとしたスキルを提供することもできるのではないかと考えているわけです。
例えば、本の内容を簡潔にまとめるというスキルは、職場での企画書作成に大いに活かせるはずです。
オフィスワークへの応用は決して少なくなく、その点からも本書を手にとる価値がビジネスパーソンのあなたにはあるでしょう。
レビューブログを管理している私には、書評のノウハウが学べるかもという強い動機から本書を手に取りました。
加えて、
書評家の仕事ぶりにも興味津々なので、楽しく拝読しました。
なかなか明かされる機会のない「書評家」という仕事の苦労や喜び、あるいはプライベートなどを知っていただくこともできるはずです。
- 書評そのものに興味がある
- 書評に付随するいろいろなトピックスに関心がある
- ビジネスでの読み書きのスキルを高めたい
- 業界事情を覗いてみたい
現在の活躍の場
音楽ライターとして出発された著者は次のようなメディアを主戦場として現在、驚異的な数の書評を毎月生み出しています。
書評だけで、月間40本近い数
- ライフハッカー
- 東洋経済オンライン
- ニューズウィーク日本版
- マイナビニュース
- サライ・JP
- WANI BOOKOUT
特に、ライフハッカーは土日祝日を除いた毎日更新だそうです。
トラッド書評からインターネット書評へ
新聞や雑誌などの紙媒体における書評(著者はこれをトラッド書評と名付けます)は、いわゆる「お堅い」書評です。
その道の専門家が担当することが多く、難解で読みにくいものが大半です。
読み手のあなたも私も、読む前から緊張します。
内容を正確に理解しなければと。
おまけに、文章に主観が色濃く反映しています。
そのせいか、正直なところ紹介された本を読んでみたいという気持ちにはあまりなりません。
このように、トラッド書評は書評が本来果たすべき、本を読みたくなる気持ちを起こすという使命をあまり果たしていないのです。
「なるほど、これはおもしろそうな本だな。読んでみよう」と思わせることが、書評の役割なのですから。
一部の人にだけの関心を引いていた書評の状況は、インターネットの興隆とともに、一変します。
インターネット書評の登場と爆発的量産です。
ウェブ上で公開される様々なインターネット書評は、
気軽に読めて、情報収集がお手軽な、「文字情報」として、広く読者に受け入れられていきます。
なんとなく消費できるという感覚で、眺めたり、読み飛ばすことが可能なのです。
読むことのハードルを劇的に下げました。
本の存在を認知できれば、その後に実際にその本を手に取るか否かは本人次第となります。
つまり、
書評としての役目を十分に果たすことができていると言えます。
インターネット書評を「あるべき姿」に近づけてくれたのかもしれません。
情報伝達と自己主張の狭間で
インターネット書評の多くは、「情報としての書評」という性格を求められています。
すなわち、「主観」は後ろに引っ込んでもらうことが賢明となります。
しかしながら、
インターネットの中には、ブログを中心とした個人メディアもたくさんあります。
個人メディアが「個人」を全く消し去ってレビューを掲載しても、中途半端な印象しか与えないでしょう。
個性が希薄化すれば、このブログだから読む、書くの意義が見えなくなります。
なので、思い切って主観に振り切る「癖の強い」レビューも少なくありません。
むしろ、そのような独自性こそを望んでいるファンもいるほどです。
印南さんは、メディアによって、「主観(オピニオン)」と「情報」を絶妙にブレンドされます。
主張を控えるときは控え、自分の意見や考え方を意識的にアピールするときはされるようです。
著者はプロの書き手なので、もちろん読者ファーストを徹底しています。
ゆえに、
読者像を常に念頭に置き、「主観」と「情報」を心憎いまでに適正に調合するのです。
それぞれのウェブメディアにそれぞれ異なる読者がついている以上、書き手はそのメディアに即した表現をすべきです。
書評家がすべきこと
- 書評の目的とは
-
読者のためにその本の内容を紹介・批評すること
ゆえに、書評家がすべきことは次の2つに尽きると著者は断言します。
- 伝える=伝わりやすい書き方を考え、実行する
- 共感をつかむ=読者の目線に立つ努力をする
なにしろ伝わらなければ意味がないのですから、伝え、その結果として共感が得られればいいのです。いたってシンプル。
このことが簡単でないことは、レビューを書いたことのある誰もが実感しているはずです。
先の2つを実現するために、2つの「熟考」が求められます。
- 「伝わるためには、どのような書き方をすべきか」
- 「できる限り読者に近づき、彼らは何を知りたくてその書評を読むのか」
誠実であること
本書の中で、著者は何度も「誠実であること」を繰り返し、強調します。
- 読者をみくびらないこと。
- 自分をごまかさないこと。
- 書物を貶めないこと。
- 著者に失礼にならないこと。
そのために、全力で一冊の本に向き合います。
誠実さは、書評家にとって、唯一の武器であり、最強の武器なのでしょう。
書き手とは、読み手の最高の理解者であるべきなのです。
まだあなたと出会っていない本と出会うために、日々の生活の中で書評を気にかけてみてはいかがでしょうか。