とにかく自分が好きなものを買う!
雑誌BRUTUSの村上春樹特集の「下」は「聴く。観る。集める。食べる。飲む。」編となります。
集めてきたレコードであったり、アートコレクションが作家自らの解説付で紹介されています。
少しばかり驚いたのですが、結構な数のアートに囲まれながら世界的作家は暮らしているようです。
彼の著作の装丁に関わった人や知り合いの絵を集めることで始まったアートコレクション。
好きなアーティストの個展に赴き、お気に入りを見つけて部屋に飾ります。
そこに絵があるだけで、生活は豊かになると村上は言いいます。
所有欲からではなく、一時的な借り物として、アートが日常に溶け込んでいるのでしょう。
生きている間、少しばかりお預かりしている感覚で絵を集めているそうです。
レコードや書物とは少しばかり異なる「集める」がアートにおいては実践されています。
以下に、彼が「一時的に保管している」作品のアーティストをご紹介。
小林孝恒
村上の所有するのはこれらとは異なる水着の女の子の絵であり、皿やスプーンの絵となります。
村上曰く、芸術家というか、ちょっと変わった人、のようです。
大橋歩
「村上ラヂオ」に掲載された銅版画を中心にしたコレクションです。
平凡パンチの表紙絵も描かれていた、村上の10代の頃の憧れの人だそうです。
和田誠
ジャズミュージシャンの肖像画が数点、彼の書斎の壁を飾っています。
上品な色彩が心を和ませることでしょう。
佐々木マキ
初期作品の表紙を手がけた佐々木マキは作家自らがご指名た経緯があります。
彼の文学世界のイメージを形作る手助けをしたその作風は極めてモダンでクールでした。
安西水丸
畏友であり良き理解者であったイラストレーターは今はもうこの世にはいません。
軽いのに軽過ぎないそのタッチは今も色褪せないのです。
落田洋子
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の表紙を担当された方です。
油彩で精密に描かれたその筆さばきは、村上の物語世界と見事に共鳴しています。
山本容子
村上が翻訳したカポーティーの「クリスマスの思い出」の表紙を担当されています。
彼が手元に置いているのは「羊をめぐる冒険」の頃の村上自身のポートレートのようです。
町田久美
日本画の伝統的な画材や技法を使って、ポップでシュールな世界を表現するお気に入りの画家。
「騎士団長殺し」をキッカケに日本画に興味を持った村上が彼女の作品へと辿り着いたようです。
語りきれない物語
惹かれるものは同じようなものです。物語はあるんだろうけど、その物語が語り切られてないという雰囲気のものが好きですね。
なかなか気にいったものには遭遇しないと言いながら、今日も村上はふらっと個展に足を運ぶに違いあるまい。