プログラミング教育について企業に協力している著者が、それでも書いておきたかったやばいタイトルの問題提起の書
2020年に政府はプログラミング教育の必修化を決定しています。
特に、論理的思考力・問題解決力・創造力をプログラミング思考と称して醸成しようとしていると著者は分析します。
そのような時代背景を踏まえての本書の主張は次のとおりです。
・コーディング(狭義のプログラミング)の教育はいらない
・プログラミング思考(も含めた広義のプログラミング)の教育は必要
コーディングとは、プログラムを書くこと、もしくは、文字や画像、音声などのデータを特定のコードに置き換える(符号化する)こと。前者は、仕様書や流れ図(フローチャート)に沿って、ソースコードを記述していくことを指す。後者は、エンコードと呼ぶのが一般的。(出典元 ASCII.jpデジタル用語辞典)
プログラミング教育の必修化に対して著者は好意的です。
しかしながら、不安視している部分もあります。
でも、そこにかかるコストを含め、やりようを間違えると、格差を助長したり、児童・生徒をもっと消極的にさせてしまう手法に堕してしまうだろう。本書が、そうならないための一助になればよいと思う。
プログラミングとは要はどういうことなんだろうか?
著者は次のように端的に言い切ります。
だから、プログラミングとは何かと問われれば、「人間相手であれば一言ですむ指示を、1万言ぐらいの命令に細分化する作業だ」と極論しても、あながち間違いではない。
ひとつひとつ適切なステップを踏まないと、うんともすんとも動かない。
人間であれば、だいたい分かるよね、で済まされていた一切が全く通用しない。
動かないということは、ある意味、コミュニケーションの断絶がそこで発生していると言い換えられます。
プログラミングは異文化コミュニケーション
コンピューターとばかり向き合っていたら、コミュニケーション能力がちっとも養われないと一般的には言われています。
あなたもそうでしょか?
逆説的であるのですが、
広い意味でもコミュニケーション能力の開発にはプログラミングは必要であると著者は言います。
コミュニケーションの真価が問われるのは異文化コミュニケーションの場面です。
プログラミングは異文化コミュニケーションそのものであると著者は主張します。
ご存知のように、コンピュータでは2進数が採用されており、人間にとっては10進数のほうが馴染みが深いです。
このように、数の数え方一つとっても、コンピュータと人間では立脚する基盤が、文化が違う。文化の違う人(コンピュータ)に対して、複雑な指示命令を与えるというのは、本当に本当に本当に骨が折れるものなのだ。
自分の当たり前が通用しない事実をプログラミングを通して経験することは、異文化遭遇・理解のプロセスそのものであるでしょう。
自分の考えが全てではなく、世界は多様性に満ちていることを身をもって実感する機会こそがプログラミングであるのです。
プログラミングとは、常に自分とは違う他者について考え続ける作業なのである。
コミュニケーション能力って、なんだろうか?
コミュニケーション能力とは、スムーズな意思の疎通を実現するために必要なものです。
成し遂げたい目的を遂行・実現するためには他者とのコミュニケーションは不可欠です。
一般的には、饒舌であることがコミュニケーション能力があることのひとつの指標のように考えられていますが、必ずしもそうではありません。
コミュニケーション能力を構成する大事な基盤として著者は次の2つをあげます。
- 相手がしてほしいことを感じ取る能力
- 相手にとって最適な指示が理解できる能力
この2つは、
これからの社会を生き延びていくために身に付けたい、いかなければならない能力にほかなりません。
プログラミングは、この2つの能力がないと成立しません。
つまり、プログラミングを通じて、こららの重要な能力が養われるのです。
コンピュータは忖度しない
日本社会においては非科学的な信仰がいまだに根強く残っています。
気持ちで乗り切れ、だとか。
気合が足りない、だとか。
スポーツ界は言うに及ばず、ビジネスシーンにおいても珍しくありません。
けれども、コンピュータにはそのような精神論は一切通用しません。
指示した内容が非論理的であるのならば、動きません。
間違った内容をコマンドすれば、思ったとおりには動かないのです。
この事実に著者は注目します。
これを人生の早い段階で経験し、物事というのは、あるいは仕事というのは論理的に考え、論理的に指示しなければ、回っていかないものなんだ、完成しないものなんだ、という体験を積んでいくことは非常に重要であると思われる。
容易に言うことをきかない他者としてのコンピュータ
現代は、異なる価値観を持つ多くの人たちと協力しながら成果を目指していく仕事が主流になりつつあります。
そのような必要のない単純で単調な仕事は早晩AIに代替えされていくでしょう。
他者とのコミュニケーションを的確に行い、同じ目標にむかって力を合わせていく。
これがビジネスパーソンに求められるコミュニケーション能力であるのです。
著者は次のように結論づけます。
人と直接話すわけではないが、プログラミング教育は異文化理解、多様化した他者と付き合うという意味で、まさにそれをシュミレーションし、コミュニケーションに必要な力を培う(培わざるを得ない)活動だと言える。
扇動的なタイトルを持つ本書は、全ページを用して、広義のプログラミング教育(思考)の必要性をこれでもかと説明します。
あなたがビジネスシーンで活躍したいのであれば、とにかく本書を速やかに手に取り、一刻も早くプログラミング思考を徹底すべきでしょう。
プログラミングは、それ自体が「あなたの考え方は?」「あなたの指示は?」と問うてくる作業である。だから結構しんどい。
生き延びたいのであれば、「結構しんどい」を何度も乗り越えていくしかありません。
あなたはそのような時代に生きているのです。
さあ、あなたの考え方は?