繁栄する黄金は至福か恐怖か
「刻刻」によって、その才能をいかんなく世間に知らしめた堀尾省太氏の第二作「ゴールデンゴールド」を読みました。
現在、第二巻まで刊行されています。
これはヤバイわ
以下、内容に言及しますのであらかじめご了承願います。
異形登場
福の神伝説が残る瀬戸内に浮かぶ小さな島に「フクノカミ」らしきものが出現することにより、島の中の経済バランスがどんどん崩れていくさまが描かれています。
この「フクノカミ」は、人の流れを活発化してしまう力を有しているのです。
ゆえに、商売を営む者にとって、その異形はまさにフクノカミとなります。
商売繁盛という商売人にとってきわめて真っ当な欲が叶えられる様が、かくも不気味に切り取られています。
不思議なマンガです
金銭の下僕
第二巻までの、ここまでのところ、さして醜い銭の戦争状態は描かれていません。
これから先、血で血を洗う経済戦争が、人間の欲が、醜悪に表現されるのかいなか、確実なことは一つも言えません。
終始不気味なトーンが通底音のように我々に感じとれるのは、金にひざまずこうとする者たちがただの一人も悪人の相を持っていないからでしょう。
そう、金の前では彼らは一人残らず機械の部品のようにクールに描かれているのです。
例えるならば、一円玉の如き存在性を唯々諾々として受け入れているかのように表現されています。
ゆえに、人間の欲が人間性を剥ぎ取られてしまっています。
金銭の下僕がこれほど清潔に描かれている作品も珍しく、それが不気味さを助長させているのでしょうか。
魅力的な3人の女性
- 主人公の中学生、早坂琉花。
- 島に取材に訪れてる宿泊客の作家黒蓮。
- 一番初めにフクノカミに魅せられた主人公の祖母。
この三人の女性が物語を駆動し、同時に相対化する役目を帯びています。
増幅し、繁栄する黄金に対抗できるのは、繁栄の源である女性たちだけなのでしょう。
今は急先鋒となっている祖母もどこかで反転すると思っているのですが、はたしてどうだろうか
資本主義の徒花
ここまでフクノカミは基本的に人の流れを変えることぐらいしか大した動きをしていません。
けれども、第二巻の後半から徐々に積極的行動を展開していきます。
奇しくも利益第一主義のゴールド好きの野心家が超大国のトップに立った今年、アジアの端でそれに呼応するかのように、資本主義の秘密にエンターテイメントの力で肉薄しようとする才能が登場したことをまずは素直に歓迎したいです。
<全くもって目の話せない一級品です