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ディカプリオの「レヴェナント」生命のメカニズムの物語

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ディカプリオ悲願のアカデミー賞受賞!

2015年制作の「レヴェナント」を見ました。

アカデミー賞撮影賞三連覇の撮影監督が撮った映像は息を呑む素晴らしさ。

映画館でなら、さぞド迫力級の映像美の世界であったことでしょう。

本作にてディカプリオは悲願の主演男優賞を受賞!

監督も「バードマン」に続き二連覇となりました。

物語は西部開拓時代の猟師ヒュー・グラスのサバイバル復讐劇です。

久しぶりに、見ていて直接的に「寒い」「冷たい」「痛い」が伝わってくる映画でした。

以下内容に言及しますので予めご了承ください。

キリスト教的世界観

物語の背骨はキリスト教的世界観となります。

主人公グラス(ディカプリオ)は間違いなく「キリスト」です。

試練の連続が彼を襲い続け、生き埋めになりながら、「復活」を遂げます。

熊に襲われ瀕死の重傷を負い、仲間に裏切ら、息子を失い、飢えと寒さに耐え忍ぶ。

過酷な生がこれでもかと展開します。

  • 裏切り
  • 試練
  • 神の裁き
  • 復活

キリスト教的世界観をスクリーン上に認めないことのほうがむしろ難しい構成です。

父(グラス)と息子の物語はそのまま、神とキリスト(グラス)に二重写しとなります。

非西洋的な見方

この映画における自然の雄大さ、美しさは圧巻です。

と同時にどこまでも大自然は人間に対して絶対性を誇示しています。

圧倒的な自然の猛威、峻厳性、無慈悲さに「神」を見出すことは極めて東洋的な視点といえます。

この作品をそのような色眼鏡で見てしまうのは東洋人であるあなただからです。

西洋の感性においては、自然とは「征服するもの」に他なりません。

ゆえに容易に「われわれを征服するもの」にそれは成り代わります。

因果応報をみてはいけない

先住民の娘を助けたことが最後の最後に命拾いに繋がります。

ここに因果応報を認めるのも、あなたが西洋文明をバックグラウンドに持ち合わせていなからでしょう。

東洋人のあなたにとって極めて親和性の高い物語構造がとられています。

パドー

しかしながら、日本においてなぜそこそこの評価でしか本作は迎えられなかったのでしょうか。

馴染み深い、受け入れやすい物語構造であるにも関わらず。

むき出しの生命のメカニズムが画面一杯に広がっていたからというのがその理由です。

生命のメカニズム発動

主人公のグラスは妻に先立たれ、最愛の息子も奪われました。

復讐のために命の火を絶やすことをあくまで避けながら、復讐を遂げます。

正確には、最後の最後に、先住民(神)に委ねる選択をとります。

彼には、無常観も悲壮感も諦念も絶望もおよそ人間らしいすべての感情がすっぽりと抜け落ちているかのようです。

ディカプリオが大根だから?

パドー

もちろんノーです。

なぜなら、人間は生命のメカニズムが作動するビークル(乗り物)にすぎないからです。

この映画に描かれている人間どもはあなたの想像の外にある存在です。

あなたと地続きに見えて、まったく違います。

彼らは生命のメカニズムに駆り立てられているただの生命体なのです。

死を出来る限り遅延されることをプログラムされたビークル(乗り物)に他なりません。

違和感の源

ここに描かれている復讐劇のカタルシスのなさは作品的な欠陥ではありません。

復讐劇の体裁をとりながら、ただ生命のメカニズムが赤い血とともに苦悶の表情とともに露呈しているばかりなのです。

血の赤さは、親子の絆、悲劇や憎悪の象徴ではありません。

ただ、自然を表徴する「白」とはまったく異なることを指し示すために「赤」が選ばれているだけなのでしょう。

道徳や倫理でこの復讐劇を計るのならば、間違った答えに至るだけです。

熊の死も、馬の死も、バイソンの死も、息子の死も。

生命のメカニズムが働かなくなったという一点においてなんらの差もありません。

あらゆる意味で死は平等です。

そのことに現代文明人のあなたは違和感を覚えることでしょう。

生命のメカニズムが演じられるためには人間性豊かな演技は必要ありません。

むしろ過剰です。

ゆえに、ディカプリオの演技を物足りないと評することは見当違いと言わざるを得ません。

大自然の中で、彼の無機的で、無感動な演技は極めて「自然」なのです。

わたしはこの映画を見ている間、絶えず「カムイ外伝」のことが頭をよぎりました。

言うまでもなく、両作品には「善悪」はただのひとつも登場しません。

本物と見紛うばかりの「熊」と「パイソン」はいずれもCGIのようです。ただし、「雪崩」は本物のようです。とにかくすごい!

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✒︎ writer (書き手)

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本サイト「シンキング・パドー」の管理人、人事屋パドーです。
非常に感銘を受けた・印象鮮烈・これは敵わないという作品製品についてのコメントが大半となります。感覚や感情を可能な限り分析・説明的に文字に変換することを目指しています。
書くという行為それ自体が私にとっての「考える」であり、その過程において新たな「発見」があればいいなと毎度願っております。

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