デジタル時代の人材獲得競争に勝つ!
白井正人氏は言います。
本書では、経営的な観点から雇用のあり方を再考する助けとして、ジョブ型雇用の意味合いや得失、産業や企業ごとの適否、そして導入の進め方を説明します。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用との相違につき、より具体的な理解を進めるためにHow論についてもジョブ型雇用の特徴を解説しています。
本書における、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の定義は次の通りとなります。
- 経営層
- マネージャー
- 人事部
本書の構成について
本書は全部で7章から構成されています。
- 日本経済と雇用システム
- メンバーシップ型雇用
- ジョブ型雇用
- 日本企業における人材マネジメントの行方
- ジョブ型雇用に必要な人事機能変革
- ジョブ型雇用施策コンセプト
- ジョブ型雇用への移行
メンバーシップ型雇用の4つの綻び(問題点)とは
次の4つとなります。
- 高度専門人材を確保・有効活用できない
- 新卒の優秀層を採用できない
- 中高年のぶら下がり人材が恒常的に発生する
- 女性社員・外国人社員・シニア社員の活用が進まない
日本を一つの組織として捉えると、組織全体として変革のリスクをとらないため、リターンもとれない状況を招いてしまっているのです。
現実的な5つの選択肢
経営環境に即して現在日本企業は次の5つの施策を採用しています。
- メンバーシップ型
- メンバーシップ型(ジョブ型要素あり)
- 中間型
- ジョブ型(メンバーシップ型要素あり)
- ジョブ型
メンバーシップ型(ジョブ型要素あり)
メンバーシップ型雇用を維持しながらもジョブ型雇用的な一部を導入して、実力主義の要素を強化するものです。
ジョブ型(メンバーシップ型要素あり)
マネージャーによる人事施策のバラツキや行き過ぎた実力主義を抑制するために、ジョブ型雇用ではあるものの、マネージャーの昇給・賞与・昇格決定に強力なガイドラインを導入するなどの企業が少なくありません。
中間型
メンバーシップ型とジョブ型のエコシステムの間をとる施策であり、特徴的な2つのオプションがあります。
オプション1
異動は会社裁量、報酬は職種別となるが、個人にも組織にも最も多くストレスがかかる施策。
オプション2
本人同意、本人起点の異動を軸としながら報酬は共通にする(職種別としない)施策。
人事機能変革の4要件
ジョブ型雇用を見据えたこれからの人事機能には次の4つの要件が求められます。
- 経営・事業運営に必要な組織能力の確保が重視されている
- 個々のキャリア自律を前提とした構えになっている
- 変化への対応力、すなわち問題解決能力が重視されている
- デジタルケイパビリティを活用した近代的な能力を備えている
もっとオープンに競争した方がいいのか?!
おさらいすると、本書の主旨は次の2つとなります。
- メンバーシップ型雇用は現在の経済環境に不適な面が目立ち、ジョブ型雇用を適用すべきケースが増えている
- ジョブ型雇用実現の鍵は市場原理の導入とキャリア自律の促進である
雇用形態の変更は、言うまでもなくパラダイムシフトであり、個人にとっても企業にとっても移行期の負荷・負担は非常に大きなものです。
力さえあれば個人であろうが、組織であろうが、競争原理に従い、勝ち組になれる時代が到来しつつあります。
組織や会社にはびこる非合理な格差是正がパラダイムシフトにより可能であるのならば、健全な競争原理が働き、誰もが納得する合理性が実現することでしょう。
納得感の観点から、勝者の理屈に敗者の理屈をどれだけ取り込めるのかに制度設計・運用の是非はかかっていると思われます。