「職場の人間関係に悩むすべての人へ」という副題を持つ刺激的なタイトルの本書はベストセラーに向かってまっしぐらである
北野唯我さんの人気ブログが書籍化されました。
重要物語形式を採用しているので、大変読みやすく頭に入りやすい構成となっています。
ビジネスシーンにおける人間関係について考察するために、組織ではたらく人間を3つの種類に類型化し、見通しの良いパースペクティブを提供してくれます。
3つの類型とは、
- 天才
- 秀才
- 凡人
となります。
この3つは別の言葉で言い換えられます。
- 創造性
- 再現性
- 共感性
お分かりの通り、この3つの特質はひとりの人間の中にブレンドされているものです。
したがって、本書は極めて示唆に富む組織論としても読めますし、ビジネスパーソンの成長のためのノウハウブックとしても読むことができるでしょう。
以下に、本書を読んで、特に引っかかった点について触れることにいたします。
最強の実行者の敵はサイレントキラーであるが、サイレントキラーとは最強の実行者がダークサイドに堕ちた姿にほかならない。
3人のアンバサダー
天才と秀才と凡人は、お互いにコミュニケーションをうまく取ることができない関係にあります。
組織的なパフォーマンスが効率的に発揮されるためには工夫が不可欠となります。
組織にはこの3つのタイプの人間を仲介・媒介する3人のアンバサダーが必要なのです。
アンバサダーとは、大使・使節や代表・代理人を指します。最近ではブランドや商品を応援する人たちの意味でよく使用されています。本書においては、大使や使節の意味あいが強く、仲介役と言ったところでしょうか。
この3人のアンバサダーは仲介役であるとともに、2つの種類の人間の中間体であるとも言えます。
- エリートスーパーマン
- 最強の実行者
- 病める天才
- 天才と秀才の間を取り持つのが、エリートスーパーマン。
- 秀才と凡人の間を取り持つのが、最強の実行者。
- 天才と凡人の間を取り持つのが、病める天才。
となります。
エリートスーパーマン
創造性があり、再現性を併せ持つ、ビジネス大好き人間
最強の実行者
どこでも大活躍が見込める会社のエース。でも革新は産まない
病める天才
天才と凡人を橋渡しできる稀有な存在。構造的に物事を捉えるのが苦手
気になるのは最強の実行者。
最強の実行者とは
本書での解説を要約しますと、
最強の実行者とは「めちゃくちゃ要領の良い人物」となります。
彼らは、ロジックをただ単に押し付けるだけではなく、人の気持ちも理解できる。結果的に、一番多くの人の気持ちを動かせ、会社ではエースと呼ばれている。
憧れの存在!
様々な立場の人間が協働して目標に向かう仕事をしている多くの企業にとって、必要不可欠の人物であると言えます。
いわゆるハイパフォーマー。
凡人の我々にとっては、目指すべき一つのモデルであると言いえます。
彼らのようなビジネスエリートにも敵は存在します。
サイレントキラーです。
サイレントキラーとは
本書に登場する人物は全部で9つのタイプに別れます。
今まで紹介した6つのタイプ以外の残りは次の3つとなります。
- サイレントキラー
- 共感の神
- すべてを理解する者
冒頭において本書は物語形式が採用されていると言いました。
実は主人公(共感の神)と神様のような犬?(すべてを理解する者)との対話にて進行していきます。
共感の神
凡人タイプの究極進化系となります。「あまりに共感性が高くて、誰が天才かを見極めること」ができる稀有な存在です。
すべてを理解する者
創造性、再現性、共感性のすべてを兼ね備えた存在。すなわち、人智を超えた存在です。
サイレントキラー
秀才の亜種。「ロジックと効率」を武器にひそかに組織を蝕む、とても厄介な存在です。
いわるゆ抵抗勢力であり、守旧派とも呼ばれる人達。
新しいことを始めようとする場合には根回しの対象となる避けては通れない一群です。
往々にして根回しで説得できない場合も多く、
あれやこれやと理屈を並べ立てて、潰しにかかる壁であり山のような存在なのです。
最強の実行者の天敵であると言えます。
サイレントキラーの本来の意味はデジタル大辞林によると、それと分かる症状が現れないままに進行し、致命的な合併症を誘発する病気のことを指します(たとえば高血圧)。見えない敵(殺し屋)ほど恐ろしい敵はいません。
鏡の向こうの自分の姿?
天敵であるサイレントキラーは秀才の亜種です。
つまり、最強の実行者にとって極めて親しい存在と言えます。
もう少しばかり踏み込んで言いますと、
最強の実行者の成れの果てであるのかもしれないのです。
最強の実行者は、
組織の発展のためにはなくてなならない存在であり、機能のひとつです。
しかしながら、天才のように「革新」をもたらすことはできません。
革新を夢見ながら、革新者を嫉妬する心は、ともすれば革新の壁になりかねません。
最強の実行者が知らず知らずのうちに自身の暗黒面に滑り落ちてしまうのです。
どうして?
否定的な関わり方となりますが「実行の実感」を得ることができるからです。
壁という障害であることは、自身の存在意義の手応えを確実に実感することができます。
夢に見るしかない実態のないレベルである革新をリアルに感じることが可能となります。
天才が主導する革新を妨げるという行為を通じることで。
最強の実行者は、組織の停滞・退行を推進する「実行者」に容易に成り果てます。
これは、先に見たように、組織の問題であると同時に個人の問題でもあります。
あれほどやる気に満ち溢れたビジネスパーソンが全くの鳴かず飛ばずに成り下がるのはよくある話です。
そのような人であるほど、
事情に精通しているために、ロジカルに強固に反対論を展開しがちとなります。
もしも、
あなたが最強の実行者であるのならば、鏡の向こうにサイレントキラーを決して見ないように気をつけるべきです
ダークサイドに堕ちないでください。
そうならないためには、共感の力を鍛えることが一番の近道のようです。
本書を読めばそのことの大切さが十分に理解できるはずです。