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一般事務職の制服の着替え時間はグレイ・ゾーンなのか?

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「制服の着替え時間は労働時間であるのか?」は過去に最高裁判決が出ていますが・・

ネットを検索すると「三菱重工業長崎造船所事件」の最高裁判決を参照し、制服の着替え時間はいかなる場合において労働時間であるとする断言をよく目にします。

それは作業に必要不可欠の作業着着用に対する最高裁の判決であり、ユニフォーム全般に対する判決ではないことに留意する必要があります。

最高裁判決をもって、制服の着替え時間は労働時間であると即断する立場に、私はありません。

けれども、労務管理上、適切な対応を尽くしたいので、

現在、一般事務職の着替え時間は労働時間であるのか否かの直接的な裁判例を探しております

私の知る限りではそのような論点で争われた事例を見つけることができませんでした(ご存知の方は可能であれば是非ともお教えください)

以下、グレーゾーンにある事案であるとの認識のもと個人の現在時点での見解を述べています。

同様にお悩みの人事マンのご参考になれば、幸いです。

私自身も確定的な答えを模索している状態にあります。私個人の意見を広く共有してもらいたいという意図はいささかもございません。本エントリーが「確定的な答え」にたどり着くための「呼び水」になればと切に願うものであります。

イオンディライトセキュリティ事件

「イオンディライトセキュリティ事件」の判決例(千葉地裁)を基に「制服の着替え時間はすべて労働時間である」という判断を下している意見を最近目にしますが、これは警備員の制服の着脱なので、当然に労働時間に決まっています。一般事務職の制服の着替えが争点になってはいないので、ほぼ参考にならないと考えます。

私の結論

一般事務職の制服の着替え時間は労働時間にはあたらない。
なぜなら、制服に着替えないと労務提供が行えないわけではないからであり、使用者の指揮命令下におかれているとは必ずしも言い切れないと考えるからです。

過去の判例からの目安

制服の着替え時間(着脱時間)が労働時間にあたるのかどうかの過去の判例に基づく目安は次の通りとなります。

  • 会社で制服着用が義務付けられている
  • 制服での通勤を認めていない(更衣場所を会社が指定している。社外での着用禁止)
  • 制服についての点検がその場で行われている
  • 制服を着用しない場合、ペナルティがある

これは、どれかひとつが該当すればよいというものではなく、すべてが満たされていることが目安の条件であると解釈するのが妥当です。

過去判例は、日野自動車工業事件、石川島播磨東第二工場事件、住友電工大阪製作所事件、三菱重工業長崎造船所事件。

ひと口に着替え時間といっても・・

制服の着替え時間は次の二通りに分けられます。

  • 出社後、制服に着替える
  • 業務終了後、私服に着替える

着替え時間と一括りにして議論されがちですが、「はじまり」と「おわり」では意味合いが実は異なります。

それについては後ほど触れることとします。

着替えないと仕事ができないのか?

先に過去の判例に基づく目安を4つあげましたが、それは簡単に言うと次のことを意味しています。

すなわち、

制服に着替えないと労務提供(仕事)ができないのか?

工場内で危険を伴う作業に従事しているので、作業着の着用はマストであるのならばいざ知らず、オフィスワーカーである一般事務職は私服のままでも問題なく業務遂行が可能です。

  • 例えば、派遣スタッフを雇用する際に制服の貸与が間に合わない場合は私服にて業務を行ってもらっているはず。
  • 例えば、妊娠中の従業員については事情を考慮し、私服の着用を認めている企業は一般的であるはず。
  • 例えば、何らかの理由で事務所内の更衣室の使用が一時的にできない場合は、私服の着用を許可するはず。

ほんとうに指揮命令下におかれているの?

労働時間であるかどうかの一般的な基準は、使用者の直接的な支配下におかれているのかいなかとなります。

すなわち、

指揮命令下におかれているのかいないのか?

出社後、業務を開始する前に制服に着替えないといけないのだから、結果として指揮命令下におかれているという意見もあります。

一見すると、雰囲気でそうなのかと思ってしまうところがなきにしもあらずですね。

それでは、業務終了後に私服に着替える時間はどう考えればいいのか?

労働時間でしょうか??

業務は終了しているので、労働時間外ですよね。

業務を終了して私服に着替える時間は当然ながら、指揮命令下におかれているとは言い切れません。

業務終了後の時間使用については専一的に従業員の意志の下にあるのですから、そのような時間が労働時間に該当するという断定は社会通念上、無理があります。

「労務提供に付随する片付け時間」は「準備時間」という範疇に留まると思われます。

したがって、

  • 終業後の着替え時間については、労働とはなんら無関係の時間である。
  • 始業前の着替え時間については、終業後の着替え時間から類推し、労働時間性に乏しいことから準備時間とみなすことができる。

これに加え、制服に着替えなくても労務提供は可能であることから、

一般事務職の制服の着替え時間は労働時間にあたらず準備時間(片付け時間)であるという解釈が成立するものと考えます。

結論を繰り返します

一般事務職の制服の着替え時間は労働時間にはあたらない

なぜなら、

制服に着替えないと労務提供が行えないわけではないから

使用者の指揮命令下におかれているとは必ずしも言い切れないから

と考えるからです。

制服の着脱は、労働力の提供のための準備時間であって、労働力の提供そのものではなく、使用者の直接の支配下におかれているわけではないと判断します。

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✒︎ この記事を書いた人

人事屋パドーのアバター 人事屋パドー 人事系ブロガー

都内に勤務の労働者。元営業マンの人事部長です。当サイトにて、人事・仕事・就活に関して書いています。あなたの悩み事の解決のヒントになれば幸いです。

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