働き方改革関連法案が本年6月に成立しました
人事マンにとっては今年前半の最大のニュースのひとつです。来年の4月1日からの施行に向かって、各社で本格的な取り組みが始まります。
広範囲にわたる一括改正であるために、社員のあなたにとっても決して他人事ではありません。
あなたの働き方に今後直接的に影響してきます。
関連する法案はたくさんありますが、本日は次の2つをとりあげます。
- 高度プロフェッショナル制度
- 有給休暇の取得に関する新制度
「高度プロフェッショナル制度」の創設
この制度(通称高プロ)は、目安として年収1075万円以上のプロフェッショナル職が対象です。
研究職やコンサルタント、ディーラーといった高度なスキルを駆使して日々仕事をする専門職となります。
平均年収1000万円台の大台を超える企業は62社あるそうです。
条件を満たせば、彼らに残業代を支払わなくてもいいという制度です。
労働時間とアウトプット(成果)って基本的には正比例しません。従って労働時間という枠組みのなかで労務管理をする必要性がないのだから、残業代は支払いませんよという理屈です。
要するに労働時間規制の外側に位置づけますので、だから支払対象外ですよねという組み立てとなります。
労働時間規制に関して厚労省のHPでは次のように解説しています。
勤務時間の上限は法律で決まっていますか。
原則は労働基準法第32条で1週間40時間、1日8時間と決まっています。また、一定の条件を満たした場合には1ヶ月を平均して1週40時間にする制度(1ヶ月単位の変形労働制)や1年の労働時間を平均して1週40時間にする制度(1年単位の変形労働制)があり、これを超える労働を法定時間外労働と言い、いわゆる残業ということになります。
知的労働であるため、このような理屈建ては理解はできます。しかしながら、「いくらでもこき使っていい」というお墨付きを国は与えるのか、といった批判は当然に出てくるでしょう。
時間をかけたからといって成果が必ずしも出るとは限りません。
その裏返しとして、トントン拍子にうまくいって仕事が終わったのなら、さっさと帰りますよも「アリ」に決まっているはずです。
時間がかかろうがかかるまいが、成果が出ればどのように時間を使おうがあなたの勝手です、という理屈です。
あなたの職場ではサクッと帰れるでしょう?
問題は自分の仕事が終わったので、たとえば昼前に帰りますが、職場内でオーソライズ可能かどうかという点にあると思われます。
職場において共通の認識が広まり、深まるには時間がかかります。それまでの間は気まずいので、帰りにくくなるのではないでしょうか。
そうなると、労働時間が長くなる、残業が増える方向に傾いてしまい、「高プロは定額で使い放題でしょ」といった誤った働き方が現実味を帯びてしまいます。
制度の運用にあたっては、年間104日の休日を取得することが義務付けられますので、「働きすぎ」には一定程度の抑止が働くものと思われます。
労働時間・休日の決まり(厚労省HPより)
- 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
- 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
- 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
有給休暇を必ず5日間取得しなさいという新しい制度
10日以上の有給休暇を付与された労働者に対して、企業は必ず5日間取得させなければならない。このような制度が新設され、2019年4月1日から施行となります。
この法律は労働者にとって受け止め方は両極端に違いないでしょう。
大きなお世話だよ
休めばその分、自分の首が絞まる
眉をひそめる:有給休暇の取得は労働者が行使する権利であり、企業に指図されるところではありません。仕事が忙しいので休んでいる暇などないとばかりに、全然休まない人は案外多くいます。
やっと休みやすくなる!!
これはありがたい
もろ手を挙げて歓迎:有給休暇の取得なんてとんでもない、休むことはまかりならんと、あからさまに、もしくは暗黙の了解的に取得できない雰囲気のブラック企業も世の中には少なくありません。
この法改正によって、仕事の属人化に見直しが図られ、休みやすい職場環境が醸成されるならば、企業価値は必ず向上するものと思われます。
有給休暇の取得促進がうまくできていなかった企業にとっては「いい感じの追い風」になることでしょう。
その他の改正
以上の2つ以外にも、いくつかの法案が可決されていますが、主なものとしては、「残業時間の上限規制」および「同一労働同一賃金のルール徹底」があります。