採用の当たり前を疑う
本書では、当社の人事総務部が中心となって取り組んだ採用変革を一つの事例として、日本企業全体の新卒採用における習慣、ひいては人生100年時代の働き方に一石を投じることができればと考えています。
30分間X3回の面接では、自社に必要な人材に欠かすことのできない「やり切る力」を見定めることが、極めて困難であるという疑問を出発点とし、改革は開始されました。
コミュニケーション能力や論理的思考であれば、従来の面接でも確認できますが、強い精神力や変化への適応力、課題形成力、やり切る力を30分X3回の面接で見極めるには限界がありました。
これまでの習慣にならった採用方法では対応しきれないのです。
このような思いを下敷きに、選考プロセスの仕組みを変えることが不可欠であるという認識に至ります。
2021年現在、挑戦は5年目を迎えています。試みは着実に実を結ばれているそうです。
本書では採用プロセスの変革を通じて、我々が切り拓こうとしている日本の未来とその幸福のあり方についても述べています。実はこれが、本書に託した真のテーマです。
- 悩める採用担当者
- 人事部
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で3章から構成されています。
- 日本の採用を変える
- 多様な人材を求めてー終身雇用制度の崩壊
- 対談ー採用変革、第一期生(2018年入社)の声
合宿選考という実験
新しい選考に対する模索は、インターンシップを参考にし、合宿選考という形でスタートします。
学生たちの鎧を脱がせるために、2泊3日という長丁場が設定されます。
真の姿を見極める
本音を引き出し、会社が求める「真の挑戦者像」と重ね合わせるプロセスを経れば、合格者が見えてくるはずです。
選考は、初年度においては、通常選考と並行して行われました。
より適切な選考プロセスを実現するために、合宿中のコンテンツは次の5つに絞り込まれます。
- ケーススタディ
- 個人面接
- グループディスカッション
- グループディスカッションをふまえたディベート
- バーベキュー
合宿選考に参加する学生には「ありにままの自分でぶつかり、思いっきり楽しんでください」「我々が見ているのは、この会社で活き活きと幸せに働いてくれるか、です」と繰り返し伝えます。
2つの成果を残した合宿選考
合宿選考により、2つの成果が得られたそうです。
- いわゆる「スルメ人材」に出会えたこと
- 合否に対する参加者の納得度がとても高かったこと
いわゆる「スルメ人材」に出会えたこと
スルメ人材とは、最初は味気ないが、噛めば噛むほど味が出る人を指します。
従来型の面接ならば埋もれてしまっていたであろう人物を確実にあぶりだすことができたそうです。
合否に対する参加者の納得度がとても高かったこと
長丁場の選考過程が終了した時点で、自分は違うな、向いていないなと思い至る学生は少なくありません。
納得度が高いために、選考に不満を抱くことがなくなるのでしょう。
合否に関わらず、全員に対してフィードバックを行う作業を自分たちに課したそうです。とても丁寧で効果的な対応です。ちょっと真似できないな。
持続的成長のために
未来永劫、企業が発展し続けるために、未来永劫正しいものはひとつもないのだというスタンスを崩さない。
それが、三井物産の挑戦なのでしょう。
「人の三井」は人に対してあまりに貪欲で、あまりに粉骨砕身を貫きます。
本書で紹介した当社で現在実践している採用の仕組みも、もしかしたら数年後には新たな知見を加え、さらに新しいかたちへと移行しているかもしれません。未来永劫正しいものは何一つないのですから。
キャリア採用についても複雑な工程を実践されています。詳しくは本書に当たってみてください。