「未来をつくる人をつくる」ことが仕事である凄腕が書いたビジネス書
企業を担う「次の次」を対象にした課題図書を探していましたが、とんでもない本に巡り合うことができました。
経営者の「かかりつけ医」として高名な岡島悦子氏の著書「40歳が社長になる日」。
今年のビジネス書ナンバーワンの予感。
というか、これでトドメかもしれない。
キャリア論を軸にして働くということ全般について、これほど包括的に目配りの効いている書籍はちょっと見たことがありません。
本書の目次
- 「40歳社長」が必要な理由
- リーダーシップの「型」が変わる
- 「40歳社長」のつくり方
- ダイバーシティ推進論の誤解
- 「40歳社長」になる方法
各章の底に流れている思想は次のとおりであると思われます。
本当の「安定」とは、安定した会社に勤めることではなく、「いつでもどこでも自分で稼げる人間」になっておく、ということです。
40歳で社長になる、なれるはひとまず置くとしても、要するに「己を磨け」という気持ちを片時も忘れるな、なんです。
火がついてしまうのは間違いない
本書のタイトルだけを見ると以下のような反応を示す方がおられるかもしれません。
扇情的なタイトルだなあ
わたし45歳なんですけど
社長の器じゃないし
ある意味すべてのビジネスパーソンにとって示唆に富む内容なのです。
- 40歳以下が読むとモチベーションに火がつきます
- 41歳以上が読むと尻に火がつきます
- 若者はやる気の火だるまとなって仕事に猪突猛進。
- シニア層は火だるまにならないように危機感をもって心を入れ替えるでしょう。
「優秀」の定義が、「過去の成果」から「未来に成果を出せそうか」のポテンシャル、に変化してしまうのです。ミドルマネジメント受難時代の到来とも言えます。
大変な時代がすでに来ています。
どのように読むかはあなたのポジション次第
本書は読者の立場によって色んな「顔」を見せます。
- 良質の自己啓発本として
- 人事戦略に悩む人事マンのヒント集として
- 将来ある若手のロードマップとして
- 中高年層のサバイバルバイブルとして
- 女子総合職のキャリアモデル提言として
時代が大きく変わろうとしている現在、
過去の方法論や成功体験にしがみつきたい気持ちをぐっと抑えて、もしくは捨て去る勇気を持たないと、将来も前進もないことを極めて論証的に優しく語りかけてくれます。
ともすれば上から目線や啖呵や断定が多いこの種の書籍において、妙に下手に出るわけでもなくコビルを売るわけでもない本書の書きっぷりは心地よく、自然とこちらにしみてきます。
忘れてならないのが、文章が非常に読みやすいということです。
わかりやすく噛み砕いているので「消化」しやすいというのとは違います。
昨今の「流動食」的な文章とは一線を画する。
内容は専門性も高く、誰もがスラスラと頭に入るという訳にはいかないでしょう。
しかしながら、ストレスなく読み進むことができます。
上手く言えませんが、「新しい文体」なんだと思います。
経験はなによりも尊い
著者の主張を一言で言うと次のようになります。
とにかく場数を踏め
これは、自分自身の陳腐化と終わりのない戦いを強いられているすべてのビジネスパーソンに捧げられるべき黄金の言葉なのです。
唯一あるのは、経験すること、場数を踏むことです。それを踏むことで、変化は怖いものではなくなります。実際、同じ30歳でも、場数の踏み方で成長にすでに大きな差が出てきます。そういう現実があることを、ぜひ知ってほしいと思います。
言葉本来の意味での「啓蒙書」である本書を特に若い人は機会があればぜひ手に取ってみてください。
職場の景色が変わります。
私は岡倉天心が残した「変化こそ唯一の永遠なり」という言葉がとても好きです。
変化は希望への鍵にほかなりません。