実務担当者からマネジャーへと続くキャリア移行の旅
中原淳氏は言います。
本書は「マネジャーになっていくプロセス」と、そのプロセスをいかに乗り越えればよいのかを、解き明かすことを目的とします。
具体的には、
- 「新任マネジャーが、これから自らが経験することであろうことを正確に予測し、知ること」を支援するため、「マネジャーになるプロセス」が解き明かされています。
- 「マネジャーになっていくプロセス」をいかに生き抜くかに関する知識が理解できるように、関連する人材開発の理論や著者が収集してきた先輩マネジャーの語りが紹介されています。
本書を、これからマネジメントという役割とかかわっていく同時代の方々、そして、自分自身に贈ります。
- マネジャー一歩手前の方
- マネジャーになりたての方
- 新任マネジャーの部下
本書の構成について
本書は全部で6章から構成されています。
- マネジャーとは何か?
- プレイヤーからの移行期を襲う5つの環境変化
- マネジャーになった日ー揺れる感情、7つの挑戦課題
- 成果を挙げるため、何を為すべきか
- マネジャーの躍進のため、会社・組織にできること
- 「座談会」生の声で語られる「マネジャーの現実」
マネジメントの本質とは
マネジメントの本質とは、
「自分で為すこと」ではなく「他者によって物事が成し遂げられる状態」をつくることです。
他者には、部下だけではなく、同僚や上司、部門長や経営層まで多岐にわたります。
マネジャーはいつも「狭間」を生き、他の組織とうまく調整をとりながら、仕事をしています。狭間を動き、時には裏で微妙な采配を取りながら、物事を達成します。
5つの環境変化とは
実務担当者からマネジャーへの移行にあたっては次の5つの環境変化を乗り越えていく必要があります。
- 突然化
- 二重化
- 多様化
- 煩雑化
- 若年化
突然化
ある日、いきなりマネジャーになる。
二重化
プレイヤーであり、マネジャーでもある。
多様化
職場メンバーの社会的属性が多様化してきている。
煩雑化
前もってやっておかなければならない予防線をはる仕事が増加する。
若年化
経験の浅いマネジャーが増加している。
新任マネジャーが乗り越えるべき7つの課題とは
次の7つが挑戦課題となります。
- 部下育成
- 目標咀嚼
- 政治交渉
- 多様な人材活用
- 意思決定
- マインド維持
- プレマネバランス
部下育成
マネジャーの基本的業務はチームの成果を出すことであり、そのためには部下の育成は不可欠なのです。
皆さんの職場には「面」がありますか?「点」だけで育成しようとしていませんか?
目標咀嚼
会社の目標を部下にかみ砕いて説明し、部下の納得感を高める必要があります。
会社の戦略を部門の仕事に落とし込み、メンバーに仕事を割り振らねばなりません。
部下へ翻訳を行うとき、ポジティブなストーリーを繰り返し語っていますか?
政治交渉
組織内にネットワークを作りだし、それを通じて自部門に資源(ヒト・モノ・カネ)を集めつつ、他部門との上手な協調も求められます。
ボスに提案するとき段取りとロジックを意識していますか?他部門とは日常的な関係構築を行っていますか?
多様な人材活用
昨今の職場は多様化していることから、年齢性別ポジション別にきめ細かな対応を迫られています。
パート・派遣の方々には仕事の全体像を伝えていますか?
意思決定
実務担当者よりも少ない知識や情報をもとに、リスクやメリット、デメリットを勘案して、適切に部門の意思決定をし、自ら責任を負わなければなりません。
決めることをためらってはいませんか?
マインド維持
矛盾と混沌に満ちた現実を前向きに受け止め、ストレスをコントロールしながら、マネージが求められています。
振り返りを促したり、励ましたりしてくれる他者を持っていますか?
プレマネバランス
プレイヤーとしての自分とマネジャーとしての自分の心理的・時間的バランスをとらなければならないのです。
あなたの時間は断片化していませんか?
マネージとはやりくり
マネジャーの語源である英語の「マネージ」とはご存知のように「やりくりする」という意味です。
マネジャーとは、もともとの語源からしても、「やりくりする人」なのです。
やりくりとは、完璧な回答を用意することではありません。
マネジャーが為しうることは、物事がひとつでも前に進むための「やりくり」をすることです。
やりくりを組織にとって意味あるものにするために、折に触れて、あなたはマネジメントの在り方について振り返る必要があります。
何度も振り返り、自分自身の原理原則を導き出さねばなりません。
それが組織運営の大きな背骨となっていくことは、今さら言うまでもないでしょう。