テレワーカーが抱える重大リスクとその対策
シニア産業カウンセラーの和田隆氏は言います。
働く人たちが変わりゆく職場環境に適応するには、「心のケアの仕組みを再構築する」ことが喫緊の課題だと思います。本書を執筆した背景は、まさにここにあります。
新型コロナウイルス感染症拡大の前には、著者は全国を飛び回る仕事ぶりであったそうです。
落ち着いて仕事に集中したいと思いながら、できなかった状況が感染症の拡大で一変します。
一日中、自宅で過ごす日々の中で、しばらく何も手につかない日々を送ることとなったのです。
これではいけないと気を奮い立たせます。
これまでは時間が足りなかったのではなく、選択と集中ができていなかったことに気づいたのです。
そのようにして、何かを始める気力を徐々に回復されました。
ご自身の体験から紡ぎ出されたのが本書となります。
カウンセラーとして、働く人の気持ちに想いを馳せ、いまお伝えしたいことを一冊の本にまとめました。
- テレワークがうまくできていない方
- テレワーカーを部下に持つマネージャー
- 人事部
本書の構成について
本書は序章を含め全部で9つのパートから構成されています。
- 会社や人事管理部門に新しい対応が求められる時代
- 日本のテレワークの現状について
- テレワーク導入に期待する「効率」に潜む罠
- 「テレワークうつ」が急増する!
- 「テレハラ」が危ない!
- 「テレワーク版4つのケア」で健康管理の実効性を高める
- リモート型「ラインケア」を遂行する
- ハイブリッド健康相談を実施する
- 情報のアップデートと共有化を図る
テレハラに注意!
テレワークの導入企業が急増したことで、「テレハラ」という新語が誕生しました。
テレハラとは、
テレハラの「テレ」はテレワークの意味で、他者への嫌がらせを意味するハラスメントを組み合わせた造語です。
明確な定義はまだありません。
一般的には、テレワーカーの就業環境や生活環境を害する言動を指します。
例えば、
- 私的なことに対する不適切な発言
- 過度な監視
- 報告や連絡の強要
テレハラを未然に防ぐためには
次の3つを行う必要があります。
- テレワーク導入の目的を明確にし、就業規則をベースとしたルールをつくる
- マネジメント、コミュニケーションの変化に適応できない人への教育
- テレワークにおけるコミュニケーションでは、周囲からの監視の目がないので、セクハラ、パワハラリスクが高くなることを認識し、ハラスメントをしない意識の形成を心がける
テレワークだから見抜けるメンタル不調の特徴とは
次の5つの側面に注意しましょう。
- 勤怠面
- 人間関係
- 仕事面
- 感情面
- 生活面
具体的には、
勤怠面
- テレワークを希望する日が多くなった
- 最近、夜遅い時間に会社のPCがONになっている
人間関係
- 業務進捗表をメンバーと共有しなくなった
- 社内のSNSコミュニケーションに参加しなくなった
仕事面
- メールの文章にまとまりがなくなった
- ウェブ会議のシステムの操作ミスが多くなった
感情面
- ウェブ会議でビデオ画面をOFFするようになった
- 背景画面を設定するようになった
- 画面を見ないでうつむいている
生活面
- 部屋がちらかっている
- 服装、髪型、姿勢が乱れてきた
共に支え合うことの大切さ
新型コロナウイルスが我々に与えた教訓の一つに、支え合うことの大切さがあります。
孤立することがいかにリスキーであるのかを私たちは身をもって知りました。
孤立はメンタルリスクを高めます。
私は、人と人とが支え合うことが最大のメンタルヘルスケアだと信じています。
事務所で仕事をすることが当たり前であったときには、上司は煙たい存在であったのかもしれません。
管理されたくない、気ままにやらせてほしいという感情が強かったに違いないはずです。
しかしながら、
テレワークがデフォルトになると、心境に変化が現れる人が少なくないようです。
上司は部下である私を放置しているのではないか。
孤立化がもたらす心理的な不安がテレワーカーの日常に前景化します。
自宅という職場には上司はいません。
仕事が滞りなく進むのは、上司と部下がお互いの役割をきちんと認識し、互いに支え合っていたからだと思い知るはずです。
離れてみてはじめてわかる気づきによって、あなたも上司も共に成長していくのでしょう。
本書が変化に適応できる組織づくりと、健康で安心して働ける職場づくりの一助となることを願っています。