ヌルい職場ではだめ!健全な衝突がチームの力を引き上げる
日本認知科学研究所理事の石井遼介氏は言います。
本書がテーマにしている「心理的安全性」とは、このように組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言えることです。
組織人であるあなたならば、「誰でも気兼ねなく言えること」が口で言うほど簡単でないことは十分にご存知でしょう。
組織において、状況を考慮し、立場を配慮する必要を無視するならば、意見は誰にも届かないことは経験的事実であるはずです。
人々が率直に話せる状況を作ることが、激しく変化し続ける時代における組織とチームの未来をつくるために、重要な仕事なのです。
率直に意見を言い、質問をしても安全だと感じられる状況、すなわち「心理的安全性」が担保されていることが、効果的な組織やチーム作りに不可欠なのです。
本書では、大企業の取締役・部課長から、人事・経営企画の責任者、そしてベンチャーの経営幹部まで、さまざまな立場や業種の100人以上の修了生によってテストされた、現場で効果的に使える「理論と実践」を凝縮してお届けします。
- 経営層
- 組織運営に悩むマネージャー
- 組織の生産性を上げたいと思うメンバー
本書の構成について
本書は全部で5章から構成されています。
- チームの心理的安全性
- リーダーシップとしての心理的柔軟性
- 行動分析でつくる心理的安全性
- 言葉で高める心理的安全性
- 心理的安全性 導入アイデア集
対人関係のリスク
組織は複数の人間で構成されているために、「対人関係のリスク」を潜在的に有しています。
「対人関係のリスク」は「健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をする」ことの大きな阻害要因です。
「対人関係のリスク」とは、
「チームの成果のためや、チームへの貢献を意図して行動すると、罰を受けるかもしれない」という不安を感じている状況のことを指します。
大きく分けると次の4つのカテゴリーとなります。
- 無知
- 無能
- 邪魔
- 否定的
もう少しばかり詳しくいうと、
- 無知だと思われたくないので、必要なことでも質問せず、相談しない
- 無能だと思われたくないので、ミスを隠したり、自分の考えを言わない
- 邪魔だと思われたくないので、必要でも助けを求めず、不十分な仕事でも妥協する
- 否定的だと思われたくないので、是々非々で議論をせず、率直に意見を言わない
このようなリスクに怯える心理的「非」安全な職場では、いつのまにかメンバーは必要な行動もしなくなってしまうのです。
あなたも、部下やあなた自身に対して心当たりはありませんか?
心理的安全性のよくある誤解
「心理的安全性」という言葉は、字面や表面だけを捉えると誤解を生みやすい言葉であると言えます。
「心理的安全性」の誤解の最たるものが「ヌルい職場」であると著者は指摘します。
人間関係の和気あいあいが過剰に求められている職場です。
「安全」という言葉の解釈が極端にゆがめられているためでしょう。
「なにもしなくても安全」や「努力しなくても安全」という理解はその典型です。
あなたの職場はどれか?
職場の実態を分析するために、「心理的安全性」と「仕事の基準」という2つを軸にして職場を吟味することはとても効果的です。
ヌルい職場
心理的安全性が高く、仕事の基準が低い
コンフォートゾーンであり、仕事の充実感は皆無
サムい職場
心理的安全性が低く、仕事の基準も低い
余計なことをせずに自分の身を守るだけ
キツイ職場
心理的安全性が高く、仕事の基準が低い
不安と罰によるコントロールが横行
学習する職場
心理的安全性が高く、仕事の基準も高い
学習して成長する職場であり、健全な衝突と高いパフォーマンスを実現
健全な衝突
実はこのように心理的安全性が高く、仕事の基準も高い組織では、実は「衝突(コンフリクト)」が促進されます。
衝突をできるだけ避ける方がいいのだという考えは、心理的安全性の低い職場では有効であるのかもしれません。
実際、そのような対処で、事なきを得た経験を持つビジネスパーソンも少なくないでしょう。
しかしながら、
心理的安全性の高い職場では、「健全な衝突」は業績にプラスをもたらすのです。
コンフリクトは次の3つに大きく分けることができます。
- 人間関係
- タスク
- プロセス
人間関係のコンフリクトとは、その名の通り、人の好き嫌いとなります。
また、プロセスのコンフリクトとは、組織間における縄張り意識の衝突を指します。
これらと異なり、タスクのコンフリクトは、同じ問題や事象について意見が異なり、意見が衝突する状態です。
心理的安全性が担保されていないのであれば、意見が衝突するだけ衝突し、組織も結論も空中分解するだけでしょう。
けれども、
心理的安全性が十分に認識されている組織のメンバーは、よりよい結論にたどり着くために、意見の多様性を尊重しようとしているはずです。
議論は常に刺激に満ち溢れ、チームはその都度自ら学習し、パフォーマンスのさらなる向上へと繋がっていきます。
チームへの満足度やエンゲージメントも連動して上がっていくに違いありません。
あなたのチームはどうなんでしょうか?