「アウト」と「セーフ」の境目がわかりやすい、労務問題のプロ弁護士による解説書
弁護士の向井蘭氏は言います。
本書では、「パワハラ防止法」の指針を踏まえ、会社と管理職が知っておくべきポイントを、まんがとイラストでわかりやすく解説しました。
次の3点を中心に構成されています。
- 会社や管理職の「パワハラ防止法」への対応策
- 職場からパワハラやセクハラをなくす方法
- パワハラやセクハラが起きた場合の実務的な対応
私は多くの企業のパワハラ対策のお手伝いをしています。その経験を活かし、本書では、「効果的な予防と対応」の方法を具体的にお話していきます。
弁護士の方が書いた解説書の構成は一般的には文字の羅列が大半ですが、本書はとても読みやすく仕上がっています。
- ハラスメント対策を徹底したい経営者
- ハラスメント撲滅を目指す人事関係者
- ハラスメント問題に悩む管理職
本書の構成について
本書は全部で4章から構成されています。
- なぜ職場でハラスメント対策が必要なのか
- 管理職のためのパワハラ予防&対応のポイント
- 管理職のためのセクハラ・マタハラ・パタハラ予防&対応のポイント
- ハラスメントを防ぐために会社が行うべきこと
マタハラを男性に対して行うことをパタハラといいます。パタハラとは、パタニティーハラスメントの略で、父性を意味する英語であるパタニティーとハラスメントを組み合わせた和製英語です。
ハラスメントによる会社への悪影響
次の3点となります。
- 金銭的な影響
- 信用面での影響
- 人材面での影響
金銭的な影響
被害者が行為者や会社を訴え、行為者や会社が損害賠償を支払うケースがあります。
信用面での影響
労働局、労基署等の監督官署からの指導、是正措置を受けると、メディアで報道されたり、会社の信用失墜につながります。
人材面での影響
離職の増加と求人難に直結します。
ハラスメントに対して経営者は次の2つの責任を負うこととなります。
- 使用者責任に基づく損害賠償責任
- 職場環境配慮義務違反に基づく損害賠償責任
非常に経営リスクが高いことをあらためて認識する必要があるはずです。
パワハラとはなにか
その定義は次の通りです。
- 優越的な関係を背景とした言動であって、
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、
- 労働者の就業環境が害されるもの
この1~3のすべてを満たすものがパワハラとなります。
防止策指針においては、
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない
としています。
管理職の指導がセーフなのかアウトなのかについて、個別具体的に法律の専門家が判断すべきケースが多発しています。
より良い職場環境を目指して
一般的に、パワハラ対策は会社にとってディフェンシブな対応であると考えられています。
しかしながら、見方を変えるならば、
職場環境を改善するチャンスであり、マネジメント力を向上させるチャンスであると言えます。
過度にパワハラを恐れるあまり、部下指導を放棄するのならば、組織力の低下は避けられないでしょう。
コミュニケーションのスタイルが大きく変わろうとしている今日、パワハラ予防の意識は、指導する者にとってもされる者にとっても、有効な指針となるはずです。
上司と部下は言うに及ばず、社員間のコミュニケーションを今よりもっと活発化することにより、組織はより一層、生産性の向上を達成することができるに違いありません。
パワハラ問題は、旧来型の日本の会社組織が変化する過程で起きる現象と受け止め、むしろ会社が変わるよいきっかけと前向きにとらえていただきたいと思います。