働きたいように働ける社会を目指して
関西大学教授の松下慶太氏は言います。
働くことにおいて、企業目線の生産性向上やイノベーション創出も重要だが、こうしたワーカー一人ひとりの幸福感、心身の健康は、個人、ひいては社会の持続性という意味で、非常に重要な要素になってくると信じている。
著者は現在、メディア・コミュニケーションとワークショップ・デザインの視点から、大学で「働き方」に関して研究をされています。
研究を通して、メディア上とリアルな場でのコミュニケーションや経験の関係が、一見すると相反しながら、実はそれぞれが密接に影響し合って成立している「事実」を日々実感されているそうです。
- 働き方に関心のある若者
- 今一度今後の働き方を見直したいビジネスパーソン
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で6つのパートから構成されています。
- コロナ禍で「ライフスタイル」はどう変わったのか?
- 「リモート・ネイティブ」はどんな世界を生きているのか?
- 「オフィス」はどこになるのか?
- 「通勤」と「会議」に意義はあるのか?
- 「テレワーク」と「ワーケーション」は広がるのか?
- アフターコロナの「ワークスタイル」とは?
オフラインとオンラインの関係性
つながっていることが当たり前の時代においては、オンラインとオフラインの関係は次の3つの方向へと進んでいきます。
- オンライン化
- オンライン・オフライン連携
- 脱オンライン
オンライン化
オフラインにおけるさまざまな制約から脱することに意味を見出し、オンライン上に既存の現実を代替・拡張した経験や新たな場所・空間をつくる。
オンライン・オフライン連携
オンラインを前提に、オンラインとオフラインとの連携に意味を見出し、オンラインと連携した場所や空間をつくる。
脱オンライン
オンラインを前提に、むしろオンラインがないことに意味を見出し、オンラインがない場所・空間をつくる。
この三つはどれが優れているとか、どれを選択するべきか、という選択肢ではない。重要なのは、オンラインとオフラインは相互排他的な二者択一ではなく、程度の問題として捉えることである。
オンラインを前提として、オフラインの価値をどの程度認めるのかの時代にあなたは生きているのです。
井戸から焚き火へ
テレワークの拡大により、オフィスに対するニーズは変化してきています。
こうした変容を例えるのなら、井戸的オフィスから焚き火的なオフィスへの変容ということができる。
井戸的オフィスとは
井戸へ生活のために必要な水を汲みに行くように、オフィスを作業や用件のための場所として利用するというものです。
井戸的オフィスで求められるのは、そこでしっかりと作業ができるかという機能性なのです。
焚き火的オフィスとは
私たちは、焚火をしながら、食べ物の調理や暖をとる以外に、それを囲みつつ話をすることに意味を見出しています。
何か用件があってオフィスに行くというよりも、そこで社員同士のコミュニケーションが誘発されたり、関係を深めたりすることが期待されている「場」であるのです。
アフターコロナにおける活動モード
次の4つのモードが考えられます。
- 集まるX移動する
- 集まるX留まる
- 離れるX移動する
- 離れるX留まる
集まるX移動する
移動して対面する活動モード。
オフィスやイベントでチームが打ち合わせしたり、作業したり、雑談したりする活動を指す。
集まるX留まる
移動しないことで生まれる対面モード。
オンラインでの打ち合わせや会議などにデジタル上で集まれることで、通勤の負担が減り、プライベートな所用に有効に時間を割くことが可能となります。
離れるX移動する
一人で集中したり、快適に作業したりする活動モード。
都心のオフィスや近くのカフェ、サテライトオフィスなどを利用したり、ワーケーションで山や海辺にこもることを指す。
離れるX留まる
自宅からうごかなくてよいモード。
移動時間がないために、子育てや介護などに時間を使うことができます。
以上の4つのモードを可能にしているのは、モバイルメディア、オンラインが生み出していると言えます。
モバイルメディア(とインターネット環境)は、移動できるのと同時に、他の機能を持った場所を働く場所へと作り変えることができるのだ。
ワークスタイルの方向性を見出すための三つのSとは
活動モードの組み合わせだけでは、自分のワークスタイルをデザインすることはできません。
どこに向かっていくのかという「方向性」、価値観が不可欠です。
そのような方向性を見出すための指針として、次の3つがあげられます。
- 刺激
- 持続性
- 共感
コロナの影響によって、働きたいように働けていない「事実」にあなたも気づいたはずです。
ゆえに、
働きたいように働きたいという、自身の心の声があなたの耳にとどいていることでしょう。
ワークスタイルはいままで、企業がデザインしてきました。
これからはあなた自身がデザインする番でしょうか。
いいえ、違います。
これからは、企業(コミュニティ)とあなた自身が共同でデザインする時代なのでしょう。
ワークスタイルは私だけではなく、企業だけでもない、「私たち」がデザインしていくものとして捉えることが重要である。