社員の副業解禁を考える管理職や経営社、そして何よりも副業に関心が大ありのビジネスパーソンにとっての必読の書です!
早稲田大学ビジネスクール教授である著者の山田英夫氏は、氏の専門分野である競争戦略やビジネスモデルの視点から副業に焦点をあてて本書を執筆されました。
労働力の不足・収入の不足を副業で補おうという発想だけで良いのか。企業は、質的に優れた人材をいかに確保し育成していくかという発想から、社員は、人生100年時代にどのようなキャリアの選択肢を持つかという発想から、副業を考えていく必要がある
本書は、副業を成功させるためのハウツー本ではありません。
これからの働き方について自分で考えたいときに必ず側に置きたい書籍なのです。
つぎの3種類の読者を想定して書いたものですと、著者は説明します。
- 副業に対して批判的である上司や経営者に向けて
- 副業の在り方や意義を再確認してもらうために既に副業を始めている方に向けて
- 漠然とした将来への不安から副業に関心を持ち始めた方に向けて
その内容は、
- (前半) 副業に関するメリットデメリットを企業・従業員サイドから理路整然と説明します
- (後半) これらを踏まえて「複業」することの意義・意味が説かれます
現在、数多く出版されている副業関連の書籍と本書が一線を画するのは、著者の次の言葉に端的に表れているからです。
本書は、「副業」(Side jobs)よりも、「複業」(Multiple jobs)に比重を置く。
副業副業とは本業に対するサブ的な位置付けとなる仕事を指します。
その一方、
複業複業とは本業とは主従関係のないフラットな位置付けにある仕事のことです。
この「複業」に従事する人々のことを著者は「マルチプル・ワーカー」と呼びます。
その考え方の根底には、本来、人は多くの才能を生まれ持っているという思想があり、その思いから本書は書かれています。
「人間はもともと複数の才能を持っており、会社の仕事ではその一部しか開花させていない」という前提に基づいて書かれている。
1つの会社に縛られる生き方を続けるならば、これから先、あなたは立ち行かなくなってしまうはずです。
あなたの中にある「才能」を目覚めさせ、新たなワークスタイルを獲得しましょう。
- 将来の所得に不安を覚えている方
- 副業に関してアカデミックに考えたい方
- 働き方を見つめ直したい方
本書の構成は次の通り
- なぜ今、「副業」なのか(1つの会社に人生を任せるリスク)
- 副業の「種類」と「実態」(社外でスキルを磨く新しい働き方)
- 「複業」を促す新しい概念(未来を生き抜く鍵は、多様性と開放性)
- 「複業」の事例研究(人と組織はどう変わるか)
- 「複業」の意義(会社に支配されないキャリアの選択肢)
- 「複業」を阻害するもの(文化・制度・価値観)
- 「提言」マルチプル・ワーカー(個人と企業にWinーWinを築くために)
パート4の事例研究は、実際に一線で活躍されているビジネスパーソンの紹介となります。ソニーやサイボウズでの勤務など、興味深いお話が満載です。
複業を行うと、あなたにはどのようなメリットがあるのか
あなたは9つのメリットを実感できるはずです。
複業が与えてくれるもの
- 収入が増える
- 状況に応じて仕事量を減らしたり、止めたりすることができる
- 定年がなくなる
- 会社でリスクをおって仕事ができる
- 新規事業の立ち上げのシミュレーションが経験できる
- 経営スキルが身につく
- タイムマネジメント力が向上する
- ネットワークが拡大する
- 複数の才能を開花させることができる
要約すると、
- 今の仕事に十分生かせる
- 将来の選択肢が広がっていく
の2つとなります。
単純に収入が増加するだけではないのです。
マルチプル・ワーカーのすすめ
著者は、
個人に対してと同様に企業に対しても、マルチプル・ワーカーの効用についての提言を行います。
個人に対しての提言としては、
- キャリアの選択肢を持つ
- 解禁されてから考えては、成功しない
- will X can X environment
- 組織の枠を超えた学習
- 起業への滑走路
- 副業から複業へ
企業に対しての提言としては、
- 現金流出のない人材確保政策
- シナジー享受から社員の自立へ
- 副業は組織システムのひとつ
- 評価者の評価能力
- 社員の心理的成熟度
- 副業解禁はモチベーションを高めるか
- コーポレート・ベンチャーによるウインウイン
詳細は本書に譲りますが、個人の側にとっても、企業の側にとっても、ここで提言されているポイントを踏まえることで、納得性や充実度が確実に変わってくるでしょう。
拘束の鎖を外すとき
個人がキャリアの選択肢を持つことは、結果として企業価値向上に直結しています。
それはとりもなおさず、社会的な豊かさの深まりや広がりに繋がっていくことでしょう。
会社に過剰に縛られてきた状況から個人が解放され、真に自律した人間として、主体的にキャリアを切り開いていける可能性が高まる。
忘れないで下さい。
自律的な働き方が、自立する個人を強化していく時代にあなたは生きているのです。