2時間でわかるシニア活用・シニア人事制度の改革の入門書
コンサルタントの森中謙介氏は言います。
本書ではシニア活用に関する世の中全般の動きを俯瞰しつつ、自社の課題抽出と取組み方針の策定に役立つ「現状分析」の手法を解説し、そこから具体的な人事制度の構築方法、企業事例を紹介している。
シニア雇用の問題は現状、過渡期を迎えています。
65歳への定年延長がスムーズになされていないなかで、政府からはさらなる延長の意向が示されており、企業は難しいかじ取りを余儀なくされています。
これまで、シニア活用に対しては、一部の企業を除き、特段の対応は見られませんでしたが、ここにきて待ったなしの対応をどの企業も迫られる現状となっています。
このような情勢に鑑み、企業担当者は、相当な覚悟とスピード感を持って、取り組む必要があります。
これからシニア活用に向けた検討を本格的にスタートしていく予定の企業に向けて、「何から取り組むか」、その取っ掛かりを提供できればとの想いを込めている。
- 経営層
- 人事部
本書の構成について
本書は全部で5章から構成されています。
- 人手不足対策としてのシニア活用
- 自社の「現状分析」をしてみよう
- シニア社員の活躍を引き出す人事制度の設計方法
- 60歳定年ー継続雇用制度の改革事例
- 60歳以上への定年延長制度の改革事例
シニアの環境分析
シニア活用を推進するための職場環境、人事制度は整っているのか、またシニア層の仕事に対する意欲はどうなのかといった実体論からのアプローチを「シニア環境分析」と言います。
分析の進め方は、ソフト面とハード面に分かれます。
ソフト面の分析(シニア自身の仕事への意欲に関する調査項目)
- 仕事への取組み意欲、あるいは仕事のやりがいの実感はどうか
- 働き方に対する不満はないか
- 職場の人間関係に対する不満はないか
- 金銭面、健康面での不満はないか
ハード面の分析(社内の仕組みに対する調査項目)
- 人事制度(評価・賃金制度)に対する満足度はどうか
- 職場環境に対する満足度はどうか
- 能力開発の機会は十分か
- 定年延長に対する希望
定年延長制度の設計ポイント
主な論点は次の5つとなります。
定年延長後の職務・役割
定年延長によりシニアの職務をそうするか、どんな役割を期待するのか。
定年延長のステップ
いきなり65歳まで引き上げるのか、段階的に年齢を引き上げるか。
定年延長後の働き方と評価
定年延長後の配置・異動・労働時間等をどのように設定するか、人事評価をどうするか。
定年延長後の賃金(給与・賞与)
定年延長後の賃金をどうするのか(引き上げるのか引き下げるのか)、60歳以前の賃金も変えるのか(全社的な賃金制度改革)
定年延長後の退職金
既存の退職金制度がある場合、定年延長まで適用を広げるのか、別制度とするのか、企業年金制度との調整をそうするのか
この中で最も重要なポイントは、定年延長にあたってシニアの「職務・役割」をどのように設定するのかであり、賃金制度を含む人事制度全体の内容に関わってくる論点である。
シニア活用の本質
著者は次の2つがポイントであると指摘します。
- 中長期(5から10年)のスパンで、自社を取り巻く経営環境がどのように変化していくか(社会環境、法制度、市場動向、経営戦略等)を予測し、その中で最適な組織体制のあり方を模索する。
- 最適な組織体制を検討する中で、シニアに求める役割の再設定や環境整備(人事制度、職務環境、教育機会の充実)を行うことでシニアの生産性を最大化させる。
組織全体の問題として表層的な問題解決を急ぐことはなによりも避けなければならないのです。