長年の取材から「女性活躍」時代のリアルを描く、徹底ルポ
ジャーナリストの奥田祥子氏は言います。
本書は一人ひとりの女性について、最長で15年にわたって継続的に取材を重ね、彼女たちの人生や心の変容を定点観測したルポだ。
当事者である多くの女性の人生を時間をかけてゆっくりと追いかける手法が、この国のリアルを鮮明に浮き出させることに成功しています。
働き辛さや生き辛さの本質が克明に抽出されているのです。
本書に登場するのは、どこにでもいる市井の人々だ。あなたの部下・同僚であり、妻であり、そしてあなた自身であるかもしれない。女性たちの苦しみが少しでも和らぐ方法を、ともに考えていただければ幸いである。
- 働く女性
- 働く女性を支える家族
- 働く女性を応援する職場の同僚
本書の構成について
本書は全部で5章から構成されています。
- 管理職になりたがらない女たち
- 非正規でも前向きな女たち
- 「敗北感」に苛まれる女たち
- 男たちを襲うプレッシャー
- 真に女性が輝く社会とは
活躍する気がないわけではない
女性活躍イコール女性管理職の増加という乱暴な目標に、多くの女性たちはノーを突きつけています。
管理職に就くことだけが「活躍」の道ではないー。取材した大勢の働く女性たちが、そう教えてくれたのである。
数合わせの女性登用が不合理であることは現場の常識でしょう。
女性たち自ら望む職場内のポジションを認め、また子育てなどをしながら働きやすい柔軟な雇用システムを整備し、推進していくことが今、早急に求められている。
システムの中には、同じ職場ではたらく上司や同僚の適切な理解が含まれていることは言うまでもありません。
無用な落伍感を超えて
少なくない専業主婦が、正社員として働く女性たちと自身を比較し、今からではとても彼女たちに追いつけはしないという「落伍感」を抱き、精神的に追い詰められるケースが多いと著者は指摘します。
なぜなら、
現在、女性に求められている「活躍」とは、「仕事での活躍」であるという社会からの無言のプレッシャーが影響しているからです。
何かが間違っています。
女性の生き方に「勝ち」も「負け」もないはずです。
家庭に入った女性たちも、それぞれの持ち場で懸命に努力し、成果を上げているのは、働く女性たちと同じである。
このような認識を当事者たち自身がどれほど正確に共有しているのかが問題なのです。
仕事以外でも頑張っているのに、周りの人たちは、社会は、どうしてわかってくれないのかー。取材した女性たちの悲痛な叫びが、いまだ耳にこびりついて離れないでいる。
真に女性が輝く社会を目指して
女性たちひとり一人が自らが望む道を歩み、そのライフスタイルを尊重できる社会。
言い換えれば、女性の生き方の多様性を受容できる社会。
このような社会こそが実現すべき女性が輝く社会であると著者は結論付けます。
女性の「活躍」のシーンや中身は、十人十色であるべきなのです。
女性たち自身が明日に向かい、自分のものさしで仕事や家庭生活における価値を見出し、己が人生を前を向いて歩み続けることを心から願っている。