古いタイプの上司と同じ働き方をしていると、あなたもダメ人材になってしまいますよ
著者である経営コンサルタントの新井健一氏は、自らの働き方について、最も真摯に考えるべきなのは、若手でも経営層でもなく、ミドル世代であると言います。
なぜなら、働き方改革のキーマンであるのが、この課長世代であるからです。
この世代が、働き方改革の本質を見極め、改革を正しい方向に導かなければ、日本も日本企業も凋落の一途をたどるだろう。
正しい方向に導き、進むために「働かない技術」が必要であると説きます。
タイトルにもある「働かない技術」とは端的に言えば、業務削減・効率化を指します。
本書では、「働かない技術」のための考え方やこれからの時代にマッチした企業人として生き残るための心構え、今後必要とされる「真の働く技術」について、ストーリー形式で解説(提案)されています。
- 課長世代
- 働き方改革を推進したい全ての方
- 人事部
本書の構成について
本書は、全部で6章から構成されています。
- なぜ「働かない技術」が必要か
- ガラパゴス化する職場
- ダラダラ職場が生まれる理由
- 「働きすぎる」ミドルの末
- 「職場脳」からの脱却
- 残業できない時代をどう生きるのか?
なぜ「働かない技術」が必要なのでしょう?
「働き方改革」のスローガンは、
「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」という一日24時間を三等分にし、バランスのある生活を送ることです。
ここで立ち止まって考えなければならないのは、
要は8時間労働とは、労働安全衛生という人道的見地から提唱され、定着したものであり、知識労働者の生産性を高めるために必要な「集中していられる時間」とは無関係だ。
という事実です。
付け加えるならば、
ある研究成果によれば、オフィスワーカーが生産的でいられる時間はたった3時間であるという報告もある。
ここまでを整理すると、
一日の労働時間は8時間あると思っているようですが、実際は知的生産性をあげるための時間があなたにはたったの3時間しかない。
という認めがたい現実なのです。
ゆえに、
「働かない技術=業務削減・効率化」が必要となります。
このような認識に立てば、残業を行い業務をこなすという行為が無駄とは言い切れませんが、いかに生産性が悪いのかが理解できるはずです。時間を投下してなんとかなった時代は終わろうとしています。時間は万能ではないのです。
この3時間であなたは何を行うべきなのか?
それ次第であなたの市場価値(社内評価)は全く違ってくるのです。
ドイツ-生産性向上のためのお手本として
日本の労働生産性を考える場合に、比較対象としてよく引き合いに出されるのがドイツです。
本書からの孫引きとなりますが、「データブック国際労働比較2018」(労働政策研究・研修機構)及び「労働生産性の国際比較2018年版」(日本生産性本部)によりますと、
日本
- 足し算で働く
- 1人あたりGDP 3.90万ドル
- 1人あたり平均年間総実労働時間1713時間
- 時間あたり労働生産性47.5ドル
ドイツ
- 引き算で働く
- 1人あたりGDP 4.22万ドル
- 1人あたり平均年間総実労働時間1363時間
- 時間あたり労働生産性69.8ドル
ドイツの圧勝となります。これが現実です。
労働時間管理がドイツ国内で徹底されていることの主因は法律での規制であると考えられます。
一日10時間を超える労働が禁止されており、かつ6か月間の平均労働時間は1日8時間以下に抑えなければなりません。
例えば、
前の日に10時間働いたならば、次の日は6時間で仕事を終えなければならないというバランスがきちんと維持されているのです。
総労働時間が少ないだけではなく、生産性が高いところには国民性すなわち仕事や労働に対する考え方の違いが反映されていると言えます。
日本は、足し算で働くので、やることが増えていく
ドイツは、引き算で働くので、やらないことを決めて守る
限られた時間の中で、一定のパフォーマンスを実現するためには、「働かない技術」をどれだけ徹底するのかが問われているのでしょう。
私にとっての働かない技術
「働かない技術」は個別具体的なものから大枠の考え方まで多岐にわたります。
本書を通じて私自身が学んだんことは以下の通りとなります。
働かない技術とは、生産性・効率化の向上のための具体的な対応であるために、これらの対応を十分に機能させるには、まず第一に、「やるべきこと」を明瞭化する必要があります。
あなたは、会社・組織・上司・顧客・市場から何を求められているのか?
これが、やるべきことです。
働かない技術とは、何をやらなければならないかをあなた自身がしっかりと認識し、それを実行することであると考えます。
ゆえに、
あなたには、やる必要のないことをやる時間など残されてはいないのです。