組織行動論の観点より日本企業の人事管理問題に迫る
本書は、大学で教鞭をとる服部泰宏氏と矢寺顕行氏の共著となります。
本書はこのように、企業と個人が出会う「採用」という現象に関心を持ちつつも、互いに微妙に異なる視点からこの問題を眺めてきた2人の研究者による共同研究の成果である。
採用革新とは、
既存の採用活動からの脱構築と再構築を意味します。
具体的には、
日本企業内で2016年以降に起こった、自社にとって優れた人材とは何かの徹底的な洗い直しとなります。
自社にとっての「優秀さ」が企業において自明であるという前提そのものを疑い、企業が紡ぎ出す採用活動の問題が、企業が自社にとっての「優秀さ」をどう捉えるかという点と不可分であるということこそ、矢寺がこれまでに問うてきた問題であった。
- 経営学の研究者
- 採用業務担当者
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で10のパートから構成されています。
- 採用活動の変化の兆し
- 採用研究の展開
- 採用革新の定位と研究課題、調査方法
- 日本の採用活動および革新の実態把握
- 採用革新のバリエーションの把握
- 日本企業の採用における「多様な入り口の設定」の発生
- 採用革新を導く要因
- 採用革新を遂行するプロセス
- 採用革新の帰結
- 採用革新の発生・遂行と帰結
本書の目的
2016年卒採用とその前後において発生した日本企業の採用革新に注目し、
- それがどのような企業において、なぜ発生したのか
- どのようにして採用革新が起こり、遂行されたのか
- そうした革新が、それを起こした企業に何をもたらしたのか
ということを経験的な研究により検証することが本書の目的となります。
採用革新を分類する
採用革新は次の5つに分類されます。
- 募集活動の革新
- 選抜の革新
- 募集及び選抜の革新
- 革新の対外発信
- 他企業との協力
このうち、もっとも多く発生しているのが「多様な入口の設定」となります。
また、最も多い組み合わせとなると、
- 複数の入り口の設定
- 採用のエンターテインメント化
- 採用のブランド化
があげられます。
優秀さを創造する
採用活動の重要な機能は、自社が「優秀」と定義する人材を募集し、選抜することにあります。
一方、どのような採用を行うかにより、自社に引きつけられて、選抜における優秀の意味合いも異なってきます。
この意味から、
採用活動は優秀さを「測定する」ことだけでなく、それを「創造する」という機能を担っているといえる。
革新に終わりはない
企業活動に終わりがないように、活動を支える人材の「優秀さ」はその時々で当然に異なるはずです。
「優秀さ」は決して固定的なものではなく、その都度ニーズに沿って再構築され、かつ再定義されねばなりません。
すなわち、革新が止まることはないのです。
お気づきの通り、
採用の在り方が変われば「優秀な」人材もまた変わります。
自社なりの「優秀さ」の創造と測定を目指すことこそが、採用担当者の最も重要な社会的使命であり、採用革新の最も重要な社会的機能なのだろう。
と同時に、それが会社的使命であり、最も重要な会社的機能であるのでしょう。