仕事と介護を両立させる人生の設計図をしっかりと持とう!
株式会社リクシスCSOの酒井譲氏は言います。
本書をはじめるにあたって、自立とは、誰にも頼ることなく生きることではないことを再度強調させてください。自立とは、自分の人生を助けてくれる依存先が複数に分散されており、自分らしく生きるための自由が確保されている状態のことです。そしてそれが、人間の幸福追求の基礎になっています。
介護とは、心身になんらかの障害を抱え、要介護状態になった人の自立を支援することを指します。
要介護者が特定の誰かに過度に依存している状態は長続きはしません。
介護する方もされる方もくたびれてしまいます。
自分の親の介護だから、自分ですべてやるべきだ、とにかくやってあげたいは、立ち止まって再考すべきでしょう。
自立の定義を間違って解釈し、行動をすすめてしまうと、そこには悲劇しか待っていません。
大人として自立してきた親を、あなたの子供にしては決してならないのです。
こうして親子関係が逆転した先にあるのは、広い意味での虐待です。これが親の幸福追求の邪魔になるのは明らかなことなのです。
- 親の介護の必要性を感じている方
- 介護している部下を持つマネージャー
- 総務・人事部
本書の構成について
本書は全部で3章から構成されています。
- 介護離職につながる3つの誤解
- 介護離職を避けるための具体的な方法
- 介護を自分の人生の一部として肯定するために
介護離職につながる3つの誤解
介護離職のリスクを高める原因となる3つの誤解とは次の通りです。
- 介護離職をしてもなんとかなる
- 介護離職をすれば負担が減る
- 子供が親の介護をすることがベスト
介護離職をしてもなんともなりません
介護離職をする場合に想定しておかなければならないリスクは次の5つです。
- 介護離職をすると、再就職までに1年以上の期間を要する
- 介護離職をすると、その後、運よく再就職できても年収は半減する
- 介護生活は、少なくとも10年程度は続く(ある意味、いつまで続くかわからない)
- 親を自宅に迎え入れ同居した場合、認知症や介護離婚のリスクが高まる
- 親に2000万円以上の預貯金があり、年金も充実していないと介護離職は現実的に厳しい
介護離職をしても負担は減るどころか増える
介護離職の負担に関して想定しておかなければならないリスクは次の4つです。
- 経済的・肉体的・精神的な負担は、すべて離職前よりも増える
- 最悪のループに入る可能性が高まり、それに入ると抜けられない
- ぎりぎりの状態になると、誰もが虐待に至る可能性を避けられない
- 介護を抱え込むことが、かえって家族の精神的な負担になることもある
子供が親の介護をすることがベストではない
自分で面倒を見る場合に想定しておかなければならないリスクは次の4つです。
- 親の身体介護を自分でやらなければ、介護離職を避けられたかもしれないといつまでも悩む
- 介護離職が「親孝行」になるとは限らず、むしろ親を苦しめるかもしれない
- 利他的な感情による自己犠牲は永続せず、どこかで必ず限界が訪れる
- 仕事における理不尽から逃げる言い訳にしてしまう
介護離職を避けるための3つの具体的な方法
負担を上手に分散させるためには次の3つの方法があります。
- 介護職(介護のプロ)に人脈を作る
- 家族会に参加する
- 職場の支援制度と仕事環境の改善に参加する
介護職(介護のプロ)に人脈を作る
次の5つは必ず理解しておいてください。
- 介護サービスを利用するには、介護サービスに関する知識が求められる
- 介護の初期に起こる「介護パニック期」を早期に脱する必要がある
- 日本の介護保険制度は、家族の負担を減らすような設計になっていない
- 介護離職を避けることに情熱を燃やしてくれる介護のプロは多くない
- とにかく一人、優秀な介護のプロに出会うことが大切
家族会に参加する
参加するにあたって次の5点を押さえておいてください。
- 家族会は、様々な効果が認められている80年以上の歴史がある仕組みである
- 家族会では、優秀な介護のプロに関する情報も得られる
- 家族会で多くの事例に触れることで、介護の理解を深めることができる
- 男性は特に介護を抱え込みやすく、相談をしない傾向があるので注意が必要
- 家族会への依存は、むしろ要介護者と自分の自立を同時に高めることとなる
職場の支援制度と仕事環境の改善に参加する
職場に関して、以下の4点をきちんと認識しておきましょう。
- 企業も、従業員の介護離職を防ぎたいと真剣に考えている
- 介護離職を防ぐための具体策・制度については現実的には貧弱な企業が多い
- 分権的、相互依存性が低い、職務自由度が高い職場(高プロ)が有利である
- 法定の制度を確認しながら活用すべきであるが、長期休暇には注意が必要
介護と正面から向き合い、肯定する
親の介護は、子供の人生が犠牲になるという話ではなく、親が子供に与えてくれる重要な変化のチャンスなのです。親は自分の人生の最後の時間を使って、矮小で間違ったフレームにとらわれている自分の子供を揺さぶり、子供に真の自立をもたらすものだと思います。
長きにわたる介護経験を踏まえて発せられる酒井さんの言葉は説得力に満ちています。
どんなに苦しい経験からも、人は学びます。学ばなければならないのです。
学んだあとに、どのように活かすのかは、あなた次第であり、あなたの自立心次第なのでしょう。