勤務間インターバルとは
平成28年度版の労働経済白書を手に取り、気になったコラムがあったので、ちょっとだけ触れてみます。
勤務間インターバルについてです。
労働経済白書の45ページに次のようなコラムがありました。
「勤務間インターバルに関する最近の動向」
勤務間インターバルは働く人の健康を確保するなどの観点から、EUなどで導入されている制度であるが、我が国においても近年では一億総活躍国民会議や労働政策審議会で取り上げられるなど、企業内ルールとして制度を独自に採り入れる企業も現れている。厚生労働省でも、勤務間インターバルの確保を推進するため、勤務間インターバルの導入を労使に促すことなどを労働基準法等の一部を改正する法律案(平成27年第189回通常国会提出)に盛り込んだところである。また、「ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)」において、「長時間労働是正や勤務間インターバルの自発的導入を促進するため、専門的な知識やノウハウを活用した助言・指導、こうした制度を積極的に導入しようとする企業に対する新たな支援を展開する」とされており、今後、厚生労働省において検討が行なわれることになる。
脚注に、勤務間インターバルとは、終業から始業までの間に一定の休息時間を確保する制度とあります。
簡単言うと、
インターバルを11時間で規制されている場合、夜中の24時に仕事が終わった労働者は、朝の9時までは働いてはいけないということです。
日本ではなじみのないこの制度は、EUでは労働法制の根幹です。
EU労働時間指令」により、EU加盟国はすべてEU指令の内容を国内法として規定する義務を負っています。
そのひとつに、24時間について最低連続11時間の休息の付与があります。
これは、まさに先の例ことを言っています。
仕事が終わったら、食事や休息の後、必ず11時間後に仕事を始めなさいということになります。
勤務間インターバル制度の主目的とは
勤務間インターバル制度の主目的は、
休息時間を確保することによって、労働者の健康を維持・増強することにあります。
労働者の疾病(脳・心臓疾患ならびに精神疾患)をもたらす危険性があると認識されている長時間労働をさせないための施策なのです。
法制化が進めば、ガイドラインに即し、労使協定を締結するという流れになるでしょう。
製造業においては、現実的な着地点の模索に相応の時間と理解がかかるものと思われます。
自主的導入にあたっての懸念
現在、自主的導入にあたり、いくつかの企業は議論を始めているようです。
そのなかで、次の4点の決着はなかなかに難題です。
- 休息時間に通勤時間を含めるのか含めないのか
- トラブルが発生したときに、例外的な対応の余地を残すのか残さないのか
- 休息時間が翌日の勤務時間に及んだ場合に、勤務を免除するのかしないのか
- また、その場合、有休扱いとするのかしないのか
議論が揺れそうな論点ばかりです。
副業との兼ね合い
労働経済白書のなかで先のコラムに注目したのは、次のことが直感的にあたまに浮かんだからです。
複数の職を掛け持ち、生計を営む場合に、この制度規制はどのような折り合いをつけることができるのだろうという懸念です。
- 折り合いをつけるために、短時間の労働後は短時間の休息時間でよいとするのでしょうか。
- 労働時間に比例し、法律で休息時間(休憩時間ではない)を段階的に設定するのだろうか。
そうであるならば、限りなくインターバルを設けることの主旨から逸脱していくように思えてなりません。
一企業でフルタイム勤務という前提がこれから先も可能であるのかどうかの時代、間単には答えはでそうにないでしょう。