コロナ後の世界における労働と法のあり方を模索する!
神戸大学大学院教授の大内伸哉氏は言います。
本書で描こうとしたのは「21世紀型社会」はどのような社会なのか、そこでは人々の労働はどのようなものとなるのか、また法はそこでどのような役割を果たすのか、ということです。
これまで通常の労働法の書籍では取り扱わないようなテーマが取り上げられています。
情報系の文献、経済史や思想史を含む歴史的な文献。
これらの知見は、私の専門分野のものではありませんが、未来を予測するという知的チャレンジをするうえではどうしても必要なものです。
- 人事担当者
- 経営層
- 若手ビジネスパーソン
本書の構成について
本書は全部で9つのパートから構成されています。
- 変わる企業と労働
- 資本主義と労働・法
- 企業はなぜ営利を追求するのか?
- 日本型雇用システムと日本型労働法
- デジタル技術が社会を変える
- デジタル技術が働き方を変える
- デジタル技術が労働規制を変える
- デジタル技術がもたらす新たな政策課題
- 21世紀型社会と労働
労務のシェアリング
雇用とは、実質的には労働力の賃貸借といえます。
労働者が自らの労働力を一定の時間、企業による使用・収益にゆだねているから、上記のように言えると著者は主張します。
現実の雇用では、企業の支配力があまりに大きいので、労働力の売買に近いと言わざるを得ないでしょう。
共同利用経済というシェアリング・エコノミーの観点からは、売買に近い雇用はこのような概念から外れるかもしれません。
しかしながら、すこしだけ見方を変えてみるのならば、
つまり、時間を軸として考察してみるのならば、
雇用は、一日8時間を他人に使用・収益させて残りの時間は自らが使用・収益しているとみなすこともできるはずだと大内さんは指摘します。
自分の所有する自分の時間の一部を他人に使わせてみると、雇用は時間の共同利用となり、その意味でシェアリング・エコノミーに含めることができるかもしれません。
労働には、自分の時間を他人とシェアする側面があることに著者は注視するのです。
これからの労働
情報がオープン化するインターネット時代において知識労働者に求められるのは、既存の情報を使いながら、新たな情報やそれらを体系化した知識を生産(創造)する力に他なりません。
ゆえに、このような情報(知識・アイデア)を持つ知識労働者の貢献を企業が適切に引き出すためには、勤続年数を重ねた上司が指揮命令するという従来の形では最大限の効果は望みがたいでしょう。
知識労働者が使うのはあくまで自らの頭脳であるのだから、それは上席の指揮命令によって動くはずもないのです。
企業が求めるのは、知識労働者の頭脳労働の成果です。
このように指揮命令よりも仕事の成果が重要となるというのは、働き方の実質が雇用から請負へと変化することを意味しています。
もしかするとこの先、企業という形態は発展的に解消し、新しい形を伴い、我々の社会(共同体社会)に存続していくのかもしれません。
組織と個人、社会と個人に対する概念の変容をあなたは切実に迫られています。
「労働のルールは、企業があるからこそ必要」というのは、20世紀型社会の発想です。21世紀型社会の発想は、労働を個人が共同体社会に貢献する活動であるととらえ、その観点からみて必要とされるルールを考えていくというものです。