なぜ一流企業は「学歴重視」に回帰したのか
就職コンサルタントの福島直樹氏は言います。
学歴差別に負けずにたくましく行動する就活生を私は数多く見てきた。この本は中堅大学、低選抜大学の学生に対する私なりの就活の応援歌でもある。
学歴フィルターとは、
新卒採用において、企業側が大学名などでフィルターをかけ、偏差値の高い大学生を優遇し、偏差値の低い大学生をふるい落とす仕組みを言います。
それを利用している企業は決して少なくない。いや、むしろ人気企業では多用されていると言っていいだろう。
学歴フィルターが生まれた要因とメカニズムがわかれば、就活生は対策を講じることができるとの考えに基づき、本書は書かれたようです。
ありのままの事実を説明した上で、学歴フィルターを乗り越えるための方法を考えてもらうことが大切なのだ。
- これから就活をはじめようとする学生
- 就活生
- 人事部
本書の構成について
本書は全部で7章から構成されています。
- 一流企業は「学歴重視」に回帰した
- 学歴フィルターは随所で使われている
- 上位大学と低選抜大学では何が違うのか
- 脈々と続く学歴差別の歴史
- 「学歴は努力の結果」は本当か
- 学歴フィルターを乗り越える
- 就活を改革せよ
なぜ企業は学歴を重視するのか
企業が学歴を重視するのには、もちろん合理的な理由があります。
それは、優秀と感じられる学生の出現率は大学の偏差値にある程度「比例」するからだ。
上位大学には優秀と感じられる学生が多いという実感を新卒採用担当者のあなたもお持ちでしょう。
限られた資源を投下し、会社が求める人物を採用するためには、選考プロセスを効率よく進めていく必要があります。
そのために、母集団の質を一定程度担保するために、合理性を働かせているはずです。
「外れが本当に少ないと感じています。東大、京大、一橋、東工大などは早慶上智やGMARCHに比べて地頭が良い人が多いですね」このように言う人事は少なくない。
確率論的に、上位校を優先させているということなのでしょう。
相対的に意欲が見られない
著者は講演会を通じての経験から、次のような感想を持ちます。
それなりに長い年月この仕事をしていると、毎年私が講演をしている大学の中には、ゆっくりと偏差値が下がっていく大学がある。昔と今では明らかに雰囲気が違う。偏差値が高かった頃は学生が「ピシッとしている」印象があった。
偏差値がやや下がった現在は、「だらっとしている」印象が強いそうです。
実感的に、良し悪しは別として、偏差値は何かの真実を物語っているのだと著者は結論付けます。
これは現場で学生と長年、接していれば誰でも自然と気づくことだ。そして多くの企業の人事はそのことを知っている。これも企業が学歴差別を行う理由の一つと思われる。
最後は「人物」であり「個人」
組織が高い生産性を目指す限り、多様性を取り込んだり、新陳代謝が不可欠なことは自明です。
ゆえに、幅広い母集団から、会社にとってふさわしい人物を選び抜く努力を人事は求められます。
効率化を求めすぎるばかりに、母集団の多様性をないがしろにすることはある意味、本末転倒に違いありません。
上位校と呼ばれる大学には、優秀な学生が相対的に多い。
おそらく、学歴という物差しは、これ以上のことを語っているわけではないはずです。
本書が言うところの中堅大学、低選抜大学の学生は、勝ち抜くために、強い意欲を示し続ける必要があります。
最後は「人物」であり「個人」なのです。
言うまでもなく、多くの企業の人事は「そのこと」だけは知っているに違いありません。