マネジャーはマネジメントを楽しまなければならない
産業ソーシャルワーカー協会理事の大久保幸夫氏は言います。
本書は、
ありそうでなかった、マネジメントスキルについて体系的に書いた実践書です。
部下が多様化するダイバーシティ経営の時代、仕事の成果だけでなく労働時間という効率も求められる時代のマネジメントを念頭に書きました。
著者は人事・キャリア・労働政策の観点から、長年にわたって、研究を続けられています。
その中で、次のような5つの信念(思い)が生まれたそうです。
- 一人ひとりがいきいきと働くことができる社会をつくりたい
- ミドルを元気にしたい
- プロフェッショナルが活躍する社会を作りたい
- 自分のキャリアに対してオーナーシップを持てるようにしたい
- ワークライフに関するたくさんの悩みを抱えている人を救いたい
このような思いを実現するために、到達した結論が、
マネジメントの進化となります。
そこで改めてマネジメントというものを正面からとらえて整理してみることにしました。
本書を通じて、マネジメント嫌いを払拭してください。
- マネジャーになりたい方
- マネジャーを育成する立場にある方
- マネジメントスキルを向上させたい方
本書の構成について
本書は全部で5章から構成されています。
- 「マネジメントを学ぶ」ということ
- マネジメントの原理原則
- 日常のマネジメントサイクルをまわす
- ダイバーシティ&インクルージョンのマネジメント
- マネジメントの哲学
マネジメントの仕事とは
次の2つが重要であると著者は指摘します。
- 他者を通じて業績を上げる
- 組織の短期業績と中長期業績をバランスさせる
他者を通じて業績を上げる
他者を通じて業績を上げるスタイルへ転換できるのかどうかのポイントは次の2つです。
- 強い決意
- 練習
メンバーひとりひとりに最高の仕事をさせるのが自らの仕事(責務)であるという強い決意があなたには不可欠なのです。
加えて、あなたは他者に仕事を任せる練習を繰り返す必要に迫られるはずです。
自分がやった方が早いを封印するのです。
自分で業績を上げることから、他者を通じて業績を上げるスタイルへの転換。この劇的な変化を楽しんでください。
組織の短期業績と中長期業績をバランスさせる
組織業績をどのように理解するのかが重要です。
目先の業績に一喜一憂しがちですが、それだけだとマネジメントの方向性を誤ります。
マネジャーは中長期業績につながる仕事を仕込み、種をまかなければなりません。
そのためには、次の2つがポイントとなります。
- 人材育成
- イノベーション
人材育成は業績を上げることの一部であることを肝に銘じてください。
加えて、
イノベーティブな取組が、先々の業績を高める準備になることも決して忘れないようにしましょう。
マネジメントの「型」をなす5つの原理原則
次の5つとなります。
- すべての関係者の強みを知る
- やって見せて、真似させる
- 問いかけ、耳を傾ける
- 期待して、任せて、見守る
- 正しく褒めて、正しく叱る
山本五十六の名言が思い出されますね。
マネジメントのPDCA
マネジメントサイクルは次の4つの段階に区分されます。
- 目標設定
- 職務分担
- 達成支援
- 仕上検証
目標達成
- 先取り・仕掛け
- 期待値調整
- 俯瞰的理解
- ジョブ・クラフティング
- 職務リスト化
- 職務廃止
- 成功ポイントと障害の想定
- 下地作り
職務分担
- 分配戦略
- 職務の再編と統合
- ストレッチ
- 最適マッチング
- 手上げ誘導
- 意義付け
- 工数・納期管理
- 権限移譲
達成支援
- 進捗管理(モニタリング)
- 見守り
- リアルタイム・フィードバック
- 課題の予見
- 側面支援
- 育成的支援
- 軌道修正
- 引き取り
仕上げ検証
- 加筆修正
- 完了確認
- ディスクローズ
- 反響フィードバック
- 質と効率の評価
- 成果検証
- 改善指導
- 内省
マネジメントは管理から配慮へ
これから必要とされる新しいマネジメントの姿やコンセプトというものを考え続け、2018年に提唱したのが「配慮型マネジメント」というものです。
配慮型マネジメントを要素に分解すると次の4つになります。
- 関心
- 補完
- 支援
- 環境
関心
一人一人の部下に関心を持つということです。
画一的なマネジメントでは粗すぎる時代なのです。
補完
弱みをしっかりと理解し、逆にそれを強みとしている人と組み合わせることで、チームとしての総合力を高めます。
補完関係をうまくコーディネートできるマネジャーが業績を上げることができるのです。
支援
部下の目標達成を側面支援することはとても大事なことです。
少し背後に回って、支援してあげましょう。
環境
仕事がやりやすい環境作りが、ますます重要になってきています。
ここで働き続けたいと思える環境を提供できることの価値は非常に大きいです。
これまでの上位下達で画一的なマネジメントスタイルではなく、部下一人ひとりの個性を踏まえて、志向・価値観や強みを活かすマネジメントスタイルだと言えます。