リアルなリアルな就活映画から気づくことはとんでもなく大きくて、そして多い
朝井リョウ氏の直木賞受賞作「何者」を下敷きに2016年秋に公開された映画「何者」を観ました。
人事担当者としては、
なるほどね~のシーン満載で、リアルすぎて娯楽作品として楽しめない部分も無きにしもあらずでした。
純粋に一観客として観るならば、
「自意識の幽閉や彷徨」がきちんと描かれた良作であると思います。
就活を体験した人がご覧になれば、
ある種の懐かしさと痛みがきっと蘇ります。
それほどにリアルが充満しています。
就活が現在進行形の人には多くの気づきを与えてくれる映画です。
これから就活の本番を迎えるあなたが本作を通じて学ぶべきことは以下のとおりです。
就活の天王山は面接です。 面接で問われるのは自分をどれだけ表現できるかに尽きます。 間違ってならないのは表現の内容が重要視されているわけではないということです。 そうではなく、表現行為そのものを見られています。 表現することから決して逃げないでください。 逃げているうちは内定は遥か彼方に霞んでいるマボロシとなります。
「よく思われたい病」が発症していませんか?
面接の場面であなたは知らず知らずのうちにカッコをつけていませんか?
- 認められたい
- カッコよく決めたい
- 価値あることを語りたい
- 意味あることを伝えたい
優秀な実績や飛び切りの体験がないにもかかわらず(多くの学生にはそのようなスペシャルはありません)、このような感情に覆われてしまった時点であなたは敗色濃厚となります。
敗北への道筋は次の二通りです。
- 虚偽や粉飾で盛大にもってしまう
- 当たり障りのない抽象的・一般的内容に逃げ込む
いずれも面接官には何一つ届かず撃沈です。
薄っぺらい印象しか残りません。
等身大をぶつけるしか突破口はありません
映画の中で主人公の拓人に内定が出ないのには理由があります。
自分のやってきたこと(体験・経験・業績)を自己判断の末に大したことがないと馬鹿にするために、当たり障りのない抽象的・一般的内容の発言を繰り返し、全く面接官に響かないためです。
言い換えましょう。
発言の内容にのみ価値を置いているゆえに、自分自身を表現できていないのです。
内容を重要しすぎるために、表現という行為に躍動感がみられない有様となります。
面接官からすると剥製を見せられているようなもの。
それでは伝わりません。
等身大を説明するとは、ありのままをすべてぶつけることではないのです。 そうではなく、 あなた自身を構成しているポイントとなる出来事・体験を要領よく伝えきることに他なりません。
あなたを表現する。それがすべてです
大部分の学生は大した経験などないのです。
誇れる業績など持っていません。
私もそうでした。
そこで萎縮してしまっては、沈黙するかうそ八百を並べ立てるしかないでしょう。
でも、誰もそのようなことは求めていません。
あなた自身が過不足なく表現されることを面接官は望んでいます。
あなた自身を表現するために、表現するという行為を表現の内容とはセパレートして考えてみてください。
表現力に富んでいることに越したことはありませんが、できないのなら今更付け焼き刃は通用しませんよね。
- 開き直って、覚悟を決めて表現することから逃げないでください。
- つまらない奴と思われるから嫌だとか、消極的な理由で表現することを恐れないでください。
面接における表現力とは一点豪華主義でいいんです。 始めから最後まで豪華絢爛である必要はありません。 これだけは伝えたいという事柄だけに全力を集中すればいいのです。
何者でもなく、胸を張る
主人公の盟友であったギンジは退学し、劇団を立ち上げ、悪戦苦闘しています。
公演の評判はあまりよくなく、レベルに対する辛辣なコメントもSNS上に多数あります。
しかしながら、月一回の定期公演を彼は頑なに続けます。
彼は表現することを決して恐れないのです。
クオリティーが一定程度まで担保されないと公演しませんといった姿勢を微塵も持ち合わせていません。
そのような心情で内定の壁に阻まれている拓人とは大違いです。
最後の最後に、拓人は表現することだけが前進することなのだと気づきます。
二年がかりでようやくにスタートラインに立ったところでこの映画は終わります。
主人公を演じる佐藤健はよく役柄に馴染んでいてやはり上手いです。 加えて先輩を演じる山田孝之の存在感は圧倒的と言えます。 この二人のシーンは密度の濃さがひしひしと伝わってきます。
表現することを恐れないものだけが前進するのです。
これはなにもアートの世界の話だけではありません。
表現は生きている限りあらゆる場面で問われます。
忘れてはならないことは、 あなたを表現できるのはあなただけということです。
さあ、下を向いていないでこれから表現しまくりです。あなた自身を大いに売りこみましょう。
自分が何者でもないことを受け止めることから就活は始まります。 就職活動を通じ、悪戦苦闘して内定を得た者だけが次のことに気づけるはずです。 自分はこれから何者にでもなれるんだと 。