「自分」と「働く」ということを考えてみたい。そう思うあなたに必要不可欠なのが本書なのです
本書は、リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所所長である古野庸一氏の手による「働く」という大テーマに正面から格闘している直球の書となります。
著者は、リクルート内の研究機関において、働くことに関する研究や調査を継続してきた「働くこと」に関するエキスパートです。
多くのビジネスパーソンに会い、「働く」実態をつかみ、「働く」動機や意味をめぐって議論をしてきました。
次のような自問自答があなたの胸の中を通り過ぎたことはないでしょうか。
働くということは、金のためのなのか、金以上のためなのか?
誰もが一度は悩んだ「問い」であるはずです。
人生100年時代を迎えるにあたり、この問いはますますあなたを迷路に誘い込みます。
だからこそ、「働くことを通じて、「生き残る」ことと「幸福になる」ことを両立させる」ことが大切であると思っています。
両立ときに相反するであろう「生き残り」と「幸福」の両立を探索する試み。
それが本書なのです。
- これから働く人
- 働くことに悩んでいる人
- もう働きたくないと思っている人
本書の構成について
全部で7章から構成されています。
- 「働く」ことについての本当に大切なこと
- 自分にとっての「働く」意味をもう一度深く考える
- 「生き残る」ことと「幸福になる」こと
- 「働く」ことと「幸福になる」こと
- 自分に合う仕事を見つけることをあきらめない
- 自分の居場所を確保し続ける
- より豊かに働く
静謐著者の昔日のエピソードや具体例が散りばめながら、あくまで穏やかなトーンで文章が綴られていきます。
活字は結構ぎっしりと詰まっているので、手早く素早くパラパラ読みこなすというわけにはいきません。
思いが文字に刻印された暖かい文章の波が寄せては返すようです。
私はとても好きです。
あらためて、筆者の言葉を借りて本書の内容に関して触れてみましょう。
- まずはじめに、「働くこと」の意味について考えます。
- そのあと、「働く」ことと「幸福」の間の関係性について考えます。
- 「自分に合った仕事」を見つけること、
- 「居場所を確保し続けること」を経て、
- 最後に「豊かに働くこと」について考察されています。
注意最終章での「豊かに」という言葉のニュアンスには若干の注意が必要です。
「エウダイモニア」とは、「よく生きること」あるいは「やりがいのある人生を生きる」という意味だそうです。
単純なハッピー(幸福)とは異なる概念となります。
「働く」という文脈で考えますと、目的や方向感を持って、コントロールできることをコントロールし、コントロールできないことを受け入れ、そして自分を受け入れることで、生き残り、エウダイモニア的な幸福感に浸りながら、働いていけると考えています。そのことを「豊かに働く」と表現しています。
ありのままに
豊かに働くためには、「自分らしく働き、ありのままの自分を受け入れること」が必要です。
受け入れるという行為の「主語」は当然に2つあります。
- 他者が
- 自分が
言うまでもなく、
ありのままは、自分の欲望の赴くままを意味しません。
自分勝手なふるまいは、自分にとっては好都合でしょうが、他人にとってはただの迷惑行為となります。
したがって、
そのようなありのままの自分は他者に受け入れられることは決してありません。
それは、周りまわって、自分にも受け入れがたい「ありのままの自分」となり果ててしまうことでしょう。
逆説的ですが、「ありのままの自分」を自分として受け入れるためには、他者から「ありのままの自分」を認められる必要があります。
「そのままでいい」と他者から受け入れられることで、
受容あなたは自分自身に対して自信を持ち、「ありのままの自分」でいてもいいと、「ありのままの自分」を受け入れることができるのです。
そのような関係性を職場の人たちと作ることができれば、豊かに働くことにつながります。
働くという行為を通じてあなたは、あなた自身をもっともっと深く知ることになります。
「働く」ことを通じて、「生き残る」ことだけではなく、「幸福になる」ことを試みることで、世界は自分の味方であると感じられると信じています。
いま、あなたが働くことが嫌になったり、働くことの意味を見いだせなくなっているとするならば、何にもまして、一刻も早く本書を紐解くべきでしょう。
少しだけ立ち止まり、少しばかり座ってみるのです。
「あなたは頑張っていますよ。本当に頑張っていますよ」