「辞める」を許さない職場に正面から対抗するために
社労士であり、弁護士である著者の小澤亜季子氏は2018年8月にホームページを立ち上げ、退職代行サービスを開始しました。
2019年9月の時点で、相談件数は400件を超え、さまざまなケースを経験されたようです。
そこから得られた知識を中間報告として公表し、意見を述べるのは、辞めたくても辞めれない人の役に立つのではないかと思い、出版に踏み切りました。
辞めたくても辞められない厳しい現実は、あなたにも他人事ではないはずです。
- 人手不足で辞めれない
- ブラック企業だから、辞めると言った途端に罵声を浴びせられ、モノが飛んできた
- パワハラ上司が退職届を受け取らない
- 上司が手元で退職届を保留し続け、手続きの邪魔をする
- メンタル不全を抱えているので、退職交渉できる状態にない
もし自分一人で逃げ出すのが難しければ、弁護士など専門家の力を借りたらいい。恥ずかしいことでも何でもありません。
多くのケースを見てきた著者の結論はたったひとつです。
辞めないことより、生き続けることが大事なのです。
- 会社を辞めようと考えている方
- 辞めることを会社から妨害されている方
- 人事部
本書の構成について
本書は全部で5章から構成されています。
- 「辞めます」が言えない人々
- 退職代行サービスは甘えか
- 「辞める」のリアル
- 退職代行を誰に頼むか
- 幸せになる生き方
第一章
- どのような人が退職代行サービスを利用しているのかの考察
- 「辞めたくても辞められない」相談増加の背景についての考察
第二章
- 退職代行サービスの実際の流れについての紹介
- 退職代行サービスを利用する人の真のニーズについての説明
第三章
- 退職代行サービスの実例紹介
第四章
- 増加傾向にある非弁業者による退職代行のリスクについての解説
第五章
- 一人一人が幸せになるための生き方について考えたことについて
退職代行を依頼する理由
退職代行サービスを利用する相談者は大別すると次の2つに分かれます。
- ヘビーな問題を抱えている
- ライトな問題を抱えている
依頼の理由は以下のようにさまざまであり、単独の場合もあれば複数の要因がからんでいる場合もあります。
ヘビーな問題を抱えた相談者の場合
- 社長や上司がパワハラを行う
- 退職届を受け取ってもらえない
- 辞めると言ったら報復を示唆される(報復を受ける)
- 会社から不利な内容の書面にサインを求められる
- 体調不良、メンタル不全である
- 残業代を請求したい
ライトな問題を抱えた相談者の場合
- 面倒くさい
- 周囲を気にしすぎてしまう、過剰な忖度をしている
退職代行が失敗するパターン
代表的なのが次の3つのパターンです。
失敗するパターン
- 会社から「弁護士でないと交渉しない」と言われて退職代行失敗
- 会社に反論できず退職代行失敗
- 不利な内容の退職時誓約書にサインを求められて退職代行失敗
弁護士ではない退職代行業者を利用する場合は注意が必要です。
弁護士でない非弁業者が、単なる伝言の域を超えて、退職の交渉をした場合、違法になります(弁護士法72条違反)と著者は注意を促します。
あなたは非弁業者が次のことができないことを知っておくべきでしょう。
- 会社からの損害賠償請求をされた場合の、会社との交渉
- 最終月の給与、有休消化分の給与、残業代、退職金、パワハラ慰謝料の請求
非弁業者による退職の連絡は、有効な退職の意思表示と認められず、退職が成立しない可能性があります。退職が成立していないのに、出勤していないとなると、その間無断欠勤となり、最悪の場合、懲戒解雇になる可能性すらあります。
命を守る
著者が言うように、
本書は「退職のすすめ」でも「退職代行利用のすすめ」でもありません。
小澤弁護士は、命を守るために専門家に速やかに相談しましょうと述べているのです。
「たかが仕事」のために、命や健康を失わないでください。この本を通じてまず伝えたかったことは、これに尽きます。
退職において理不尽な場面に遭遇したのならば、決してひとりで闘わないでください。