本書は生産性向上の実現に向けて尽力する担当者にとって力強い参考図書となるでしょう
新経営サービスの上級コンサルタントである著者の岩下広文氏は、本書で取り扱うテーマである「生産性の向上」に対して、企業は一般的には2つのアプローチが可能であると指摘します。
その2つとは「業務改善・改革」と「人材マネジメントの改革」となります。
- 業務内容やプロセスの見直しを通じて、効率性を高める方法
- 社員の働き方の見直しを通じて、生産性を高める方法
本書では、15年以上にわたる人事コンサルティングの経験を踏まえた上で、「人」の側面からの生産性向上アプローチ、すなわち「人材マネジメント改革」を通じた生産性向上アプローチについて解説を行っています。
体系的かつ網羅的な構成であるため、知りたい箇所のみを拾い読みすることも可能な、使い勝手が良いつくりとなっています。
- 業務効率を上げたい方
- 組織パフォーマンスの向上を目指す管理職
- 生産性向上施策に取り組む人事
本書の構成について
本書は、全部で6章から構成されています。
- 生産性向上が求められる背景
- 生産性を具体的に理解する
- 日本企業の生産性が低い理由
- 生産性向上に向けたアプローチ
- 生産性向上に向けた具体的な取り組み施策50
- 生産性向上への取り組みに失敗しないために
ざっくりいいますと、
本書の前半では、
「人」の側面からどのように生産性向上への取り組みを行うのかについて理論的・体系的な方法論が解説されています。
本書の後半では、
人材マネジメント関連の生産性向上施策について、「50」の具体策が紹介されています。そのなかには、見覚えのある施策ばかりではなく、少しばかりエッジの効いた具体策も取り上げられています。
そもそも生産性とは?
一番よく知られた生産性の定義とは次の定義でしょう。
生産性 = アウトプット÷インプット
生産性とは、「1投入量あたり、どれだけの量や金額を生み出すことができたのか?」となります。
たとえば、人事部が把握しておくべき生産性の指標には「労働生産性」が一般的です。具体的には、「売上高」÷「社員数」や「付加価値高」÷「総労働時間」などがあげられます。
したがって、
生産性を向上させるためには、次の3つのパターンが考えられます。
3つのパターン
- 分子(アウトプット)を増やす
- 分母(インプット)を減らす
- 分子(アウトプット)を増やしながら、分母(インプット)を減らす
式の上では理解できるものの、実際に行うとなると当然に一筋縄ではいきません。
労働生産性の影響要因
生産性に影響を与える要因には様々なプラス要因、マイナス要因があります。
たとえば、労働生産性で見てみると、
社員の人的側面
- 社員の能力
- 社員の性格
- 社員の意識・姿勢
社内の環境的側面
- 物理的環境
- 人的環境(組織風土)
人材マネジメントの側面
- 人事制度
- 就業形態
仕事・業務の側面
- 社内ルール(含む会議ルール)
- 指示命令系統
- 職務(定義・プロセス)
従業員の数だけ、何がプラスに効いているのか、マイナスに影響しているのかの組み合わせがあります。
粘り強く、きめ細かい対応が人事には求められます。
生産性向上の取り組みを成功させるためには
取り組みの成功率を上げるためには、以下の「必須事項」だけではなく、「付加事項」もあわせて実施することが望ましいです。
必須事項とは、
- 目的・ゴールの明確化
- 実施計画の明確化
- トップによる意識付け
- 社員心理を考慮した対応
- 懸念点への対策
付加事項とは、
- 他社好事例の参照
- 全社横断プロジェクトによる推進
- 社外へのアナウンス
- インセンティブの付与
- 継続的な取り組み
必須事項をすべて実施することも結構なハードルの高さです。
が、これだけで成功するわけではありません。
これに加えて、きめ細かい対応である「付加事項」は欠かせないのでしょう。
改善のためのヒントがほしい方はぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。