副業・兼業禁止の禁止って?
現在、多くの企業では就業規則によって副業・兼業を禁じています。
一方、政府は働き方改革の一環として、副業・兼業のための環境整備について検討を重ねています。
副業、兼業は解禁されるのでしょうか?
本日は、副業・兼業についてお話します。
副業・兼業の意味
定義が難しいのですが、一応次のようなイメージをもっていただければ、そんなに的外れにならないでしょう。
- 副業とは、本業と比較し、相対的に少ない労力により所得を得ることのできる仕事のことです。家賃収入や株式売買による儲け等の不労所得も副業に入りますが、副収入との違いは不明瞭といわざるを得ないところがあります。
- 兼業とは、本業以外に一定以上の労務を提供し、雇用主の法人または個人から金銭報酬を受け取る仕事のことです(自ら起業し収入を得ている場合も含む)。
多くの企業の現在のスタンス
調査機関の調べによると、現在90%以上の企業が副業・兼業を就業規則にて不可としています。
その主な理由としては次の4つがあげられます。
- 本業における労務提供に対して悪影響(質の低下等)を及ぼす可能性が高いため
- 兼業行為が不正な競業に該当することを避けるため
- 長時間労働による労働者の健康被害を回避するため
- 兼業や副業の中身により自社の社会的信用が毀損することを避けるため
企業によっては、副業や兼業を条件付で認める許可制とするような就業規則を定めるところもあります。
「許可します」、「許可しません」とするための納得性の高い基準を定めることは容易ではありません。
労働時間外に仕事をしようが余暇を楽しもうが、その時間をどう使うのかは労働者の自由であるはずです。
企業がどこまで規制をかけることができるのかについては、限定的とならざるをえません。
それによって適切な労務提供が損なわれたり、会社の評判や信用に傷がついてしまうことを企業は見逃すわけにはいかないでしょう。
政府の目論見とは
政府は、副業や兼業を企業が容認する方向で議論が進むことを求めています。
その背景にあるのは経済の活性化です。
雇用関係に縛られない働き方を推進することで、生産性の高い労働の実現を目指しているのです。
一例として、会社に勤務しながら、新しい事業を起業するといった働き方です。
個人の活躍の場を一企業内に留めず、働き方の多様性を押し広げていこうとしています。
これに加え、兼業・副業により、労働者の能力の向上やスキルアップを促し、それが結果的に企業の成長発展につながることが期待されています。
企業の今後の対応
今後の企業対応は次の3つとなるはずです。
- 副業や兼業を全面的に解禁する
- 副業や兼業を条件付で認める許可制を採用していく、またはそれを堅持する
- 副業や兼業を従来どおり認めない
兼業と副業は別物なので、副収入に近い副業については、運用により緩やかに認めていく流れとなることが予想されます。
兼業については、本業との兼ね合いの度合いにより、簡単に広がってはいかないでしょう。
労務管理の観点からもクリアしなければならない課題は多そうです。
たとえば次の3点です。
- 複数企業で勤務している労働者の健康障害が発生した場合、労災の主たる責任はどの企業にあるのかの線引きが確定的にできうるのかどうか
- 時間外手当は8時間勤務を超えた企業が全面的に負担しなければならないのか
- 労働保険上の算定のための賃金は複数企業の合計額が妥当なのかどうか
いずれも一筋縄で決着がつきそうにない問題です。
黙って爪を研ぐ
将来の労働人口減少に対してどう対応していくのか?
国が抱えるこの難題に対する答えが、働き方の多様性、すなわちダイバーシティの推進です。
それを推し進めるにあたり、副業・兼業の解禁問題は避けては通れない問題なのです。
推進の意図や目的は大いに賛成するところなので、異論は全くありません。
実際の運用にあたっては、従業員間には温度差があり、その理解には時間がかかるでしょう。
国による環境整備も急務であると考えます。
労働者として今まで以上に個の力が試され、問われる時代になったことだけは間違いないようです。