一言でテレワークといっても、現実は非常に多義的である
弁護士の末啓一郎氏は言います。
やみくもにテレワークを導入しても、このような成果を達成できるわけではない。それどころか、業務効率の低下や、さらには労働法規違反として、深刻なコンプライアンスの問題すら引き起こしかねない。
厚生労働省による各種ガイドラインがあるものの、企業における実際の導入や運用については注意すべき点や工夫しなければならない点が山積しています。
ゆえに、適切な対応をとるべく、本書を手に取りましょう。
本書の構成の概要は次の通りとなります。
- テレワーク導入を検討するにあたっての議論の前提を多角的に整理
- 雇用型テレワークへの労働法規の適用を検討
- テレワーク導入で生じるトラブルを回避するための法的留意点と労務管理のポイントを提示
自営型のテレワークについては必要最低限の記述となります。
- 導入を検討している担当者
- 本件を取り扱う弁護士や社労士
- 対応の必要がある人事関係者
本書の構成について
本書は全部で3章から構成されています。
- テレワークに関する基本知識
- 雇用型テレワークへの労働法規の適用
- テレワーク制度導入の実務的留意点
テレワーク導入により期待できるメリットとは
- 生産性の向上
- 優秀な人材の確保、離職抑止
- コスト削減
- 事業継続性の確保
- 多様で柔軟な働き方の確保(ワークライフバランス)
- 仕事と育児、介護、治療の両立
- 通勤時間の削減
- 労働人口の確保
- 地域活性化
- 環境負荷の軽減
テレワーク導入で生じうるデメリットとは
- 仕事と私生活の区別が曖昧になることによる弊害
- 出社しないこと自体による業務効率の低下
- セキュリティ上の懸念
- コストの増大
- 組織としての一体感低下のおそれ
- 不公平感助長のおそれ
- 同一労働同一賃金の問題
社内規則等の整備について
すでに雇用関係にある従業員にテレワークを命じる場合(テレワーク勤務を許可する場合)には、それぞれに応じた労働条件変更の手続きが必要となります。
次の2つの場合に分けて考える必要があります。
- 就業規則の変更を必要としない場合
- 就業規則の変更が必要な場合
就業規則の変更を必要としない場合
労働時間制度やその他の労働条件が同じである場合は、就業規則を変更しなくても、既存の就業規則のままでテレワーク勤務ができます。
現実的にはテレワークの導入や臨時的導入を考える場合は、この線で導入実施が可能であれば、変更しないに越したことはないでしょう。
就業規則の変更が必要な場合
報告連絡相談等の手段の指定やセキュリティ問題等に関する取り決め事項が発生する場合は、それらに関する規定の新設や整備が必要となってきます。
したがって、
テレワークに関する就業規則を定める場合は、
- 労働時間についての定め
- テレワークの場合の時間外勤務
- テレワークの場合の休日
について、きちんと決めておく必要があります。
就業規則規定についての解説
本書では、厚生労働省が提示する「テレワークモデル就業規則」について、ポイントを押さえた解説がなされています。
あらたに規定を制定する必要のある担当者にとっては有益な情報が満載です。
また、巻末には資料として「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」が掲載されていて、参照するのに便利です。
冒頭のテレワークの基本的な事項から目を通していただければ、現在取り組んでいる課題を明確にするうえで、役に立つ視点もあるのではないかと考えている。