「これからの働く」を真剣に考えたい人にとっては確かな「道しるべ」となる良書です
30代の方に向けて、働くことにまつわる、知っているようで意外と知らない事実や気づきのためのヒントについて、全部で11の切り口から丁寧に解説されています。
本書の内容は、全労済協会が2017年6月から18年5月にかけて12回にわたり開催した「これからの働き方研究会」に基づいています。
この会の代表(主査)である東京大学社会科学研究所教授、玄田有史氏が、本書の編纂を行っています。
会に関わりのある総勢11人の書き手が、信頼できるデータや資料などを駆使し、今後の働き方の見通しについて有益な情報(考え方)を読者に提供しています。
それでもすべての執筆者に共通するのは、自分の働き方を見つめ直したい、ほんの少しでもよりよい方向に変えていきたいという人にとって、ささやかなヒントとなる何かを伝えたいという思いでした。
自分らしい職業人生を送りたいと願うのならば、参考になるところが大いにあります。時間をかけて将来の働き方を見つめ直したいと思う方には有意義な本です。
- 働く30代
- 新たな取り組みを模索する人事パーソン
- 20代以下の若い世代
本書の構成について
働くことを考える場合に、とても大切な11のテーマ別に本書は構成されています。
それぞれが独立しているので、あなたの関心や興味のあるところから読み進めることができます。
- 真の働き方改革とは
- わたしは正社員?
- 転職を選択する前に
- なぜ副業をするのか
- テイラーワーカーとは
- 賃金と報酬の世界
- 働く力を自分で高めるために
- 健康に働き続けるには
- 変わりゆく夫婦の約束
- 忙しい日々を乗り切る
- 良い職場をつくるのは誰?
テイラーワーカーとは、柔軟性のある働き方をする者を指します。特徴としては、労働時間が短いこと、労働時間のスケジュールを自分の判断で、瞬時に変更できることの2点があげられます。テイラーとはテーラーメイドの「あつらえる」、すなわち「自分の思い通りに作る」という意味から名付けられたようです。
これらの11のテーマに加えて、玄田さんが「結章」を書かれています。
もう少し詳しく見てみると、
- 第一章と第二章は、これからの働き方を考える上でのキーワードである「時間」と「契約(言葉・文言)」について考えます
- 第三章から第五章までは、「働く場所はひとつである」というあなたの常識化した先入観とは異なるスタンスについて紹介します。
- 第六章から第八章までは、働く行為を通じて、より多くの成果物を得るためのヒントが示されています。
- 第九章から第十一章までは、これからの働き方には欠かせない、人と人とのつながりについて考察されています。
あとがきを含めると350ページの内容盛りだくさんの厚さです。活字もぎっしりなので、完読にはいささか骨が折れます。
頭から通しで読むのではなく、関心のあるところから攻めるのがよいのかもしれません。
また、各章の終わりにポイントがまとめられているので、それをはじめに押さえてから読むと、すんなり内容が頭に入ってきやすくなります。
各章に共通するメッセージとは
玄田さんは、本書を通読すれば、各章を貫くメッセージをあなたも感じ取ることができるはずだと言います。
メッセージは全部で4つあります。
- これからの望ましい働き方を実現していく上では、勤める会社や職場の上長とのコミュニケーションが今まで以上に重要になる
- 「できるまでなりふり構わずやる」から「やれることを最大限しっかりやる」といった限界を意識した勤務スタンスへと個人も組織も転換する必要がある
- これからの働き方の基本姿勢の転換については、30代の働き手たちが大きなカギを握っている
- 利用できる情報や仕組みをフル活用・利用していこう
ここには、
自分で自分の未来を切り開いて、創り出していく覚悟が求められていると同時に、
自分一人では限界があり、周りの人間を助け、周りの人間から助けられることが当たり前である働き方の未来が想定されています。
本書には、そのような未来に繋がっていくよう、願いが込められているのです。
いかに働くか、他人まかせにするのではなく、自分で決めていく。働く地図に新しい道を描き加えていく。働く地図は、見るための地図であると同時に、描いていくための地図です。それは、1人ひとりが描く地図であり、みんなで描いていく社会全体の働く地図なのです。
次はあなた自身が地図を描く番です。