子の看護休暇・介護休暇の改正とは
子の看護休暇・介護休暇が2021年1月1日からは時間単位で取得が可能となります。
人事関係者の間では、すでに就業規則の改定を完了、もしくは最後の調整の段階にあるかもしれません。
2017年1月1日より半日単位取得が可能となっていましたが、改正によって取りやすさの利便性が高まる一方で、運用の煩雑さは確実に増します。
以下に改定作業を通して分かった「気づき」について解説します。
- 1時間未満の時間単位の取得は企業の任意。つまり規定化可能
- 30分単位の時間取得を定める場合は、現行の所定内労働時間が1時間未満の時間を含む7時間30分であっても、1日の所定内労働時間数を管理する場合に切り上げる必要はなし
あなたのご参考になれば、幸いです。
子の看護休暇とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、病気、けがをした子の看護、または子に予防接種、健康診断を受けさせるために、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇を指します。
「介護休暇」とは、要介護状態の家族を介護するために、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇を指します。
時間単位での取得に関する厚労省の解説
今まで半日の取得が限度であったものが、これからは時間単位での取得が可能となります。
厚労省の解説には「時間とは1時間の整数倍をいい」と定義づけられています。
これに加えて、
所定内労働時間が1時間未満の時間を含む場合は、1時間未満の時間を切り上げしてくださいと解説が続きます。
例えば、
1日の就業時間を9:00から17:30と定めている場合、所定内労働時間は昼休憩を除き、7時間30分ですから、30分を切り上げて、8時間で管理しなければならないと解説しているのです。
中抜けを禁じた場合
1時間単位の取得に際して、基本的に次のような取り方を厚労省は説明しています。
始業時刻から連続または終業時刻まで連続して取得する
これは、勤務時間の途中で「中抜け」を認めないという意味です。
例えば、始業9:00から終業17:30までの会社の場合、2時間取得したいときは、
- 始業から2時間なので、9:00から11:00までの2時間取得
- 終業までの2時間なので、15:30から17:30までの2時間取得
のいずれかとなります。
「中抜け」を認めると業務に著しく支障をきたす職業の場合(パイロット・塾講師・インストラクターなど)を想定し、モデル規定例としてあげています。しかしながら、労使の話し合いにより、可能であれば「中抜け」を認めるように推奨している一文もさりげなく挿入されてはいます。運用上の難しさがあるので、多くの企業は「中抜け」は規定化を見送ると思われます。
今までの半日取得が可能である場合と比較すると、ここで問題が発生します。
例えば、始業が8:30の会社ならば、
午前中は勤務して午後から取得しようとする場合、1時間単位取得を前提とするので、
- 中途半端な11:30からの休暇取得
- やることが多いのでとにかく昼までと頑張ろうと思っても、1時間単位ゆえに、あろうことか昼休憩を挟まざるを得ず、13:30からの休暇取得
いずれかの不本意な選択肢しかないのです。
従業員にとって、非常に中途半端感がぬぐいきれないと言わざるをえません。
例えば、終業が17:30の会社ならば、
午前中を休み、午後から出勤しようと考えている場合、1時間単位取得を前提とするので、
17:30の終業時刻を起点とするため4時間取得の13:30からの出社となります。
これも同様に、従業員にとって違和感が残る運用となります。
あっさり解決
従来通り、始業から12:00まで、あるいは13:00から終業まで、勤務したり休んだりする制度運用が可能かどうかに頭を捻りました。
どうにも上手い制度設計が思いつきません。
答えは従業員が持っていました。
30分単位での取得は不可能なのですか?
厚労省の解説に縛られ先入観を持っていたために、盲点となっていたのです。
ジーザス!
管理の煩雑さは増加しますが、それをクリアさえできれば、従業員にとってはシンプルな運用が約束されます。
これなら、
8:30始業の会社であっても、8:30-12:00の勤務や休暇取可能ですし、
17:30終業の会社であっても、13:00-17:30の勤務や休暇取得が可能となります。
所管の東京労働局雇用環境・均等部に確認しました。
- 1時間未満の時間単位の取得は企業の任意。つまり規定化可能
- 30分単位の時間取得を定める場合は、現行の所定内労働時間が1時間未満の時間を含む7時間30分であっても、1日の所定内労働時間数を管理する場合に切り上げる必要はなし
スッキリしました。
- 例えば、始業が8:15や終業が17:15の会社の場合は15分単位での取得を同様に可能にすればスッキリしますが、15分の取得に現実性があるかどうか議論が分かれるところだと思います。実際の運用は難しそうです。
- 専門機関には、30分単位での取得を確認し、1時間未満の時間単位全般にわたる聞き方をしていません。しかしながら、合理的に考えて30分以外の時間単位についても問題ないと思われます。気になる方は直接問合わせて確認してみて下さい。
今回の教訓は、
30分単位で時間取得をするという発想がない限り、そのことの適法性を社労士や弁護士、労働局にこちらから質問をする機会が訪れないということです。
彼らも忙しいので、大抵の場合、そこまで親切ではありません。
このような場合は特に問題ないですよとは、少なくとも私が調べた限りどこにも指摘がなかったので、エントリーしました。
同じような悩みを持つ方の解決策の参考になれば嬉しいです。