インビクタス、涙が止まらず、新幹線の中で見たんでえらい目にあった

投稿日:2017-02-02 更新日:

 

不屈の精神の物語⇒

先週、大阪出張の友に、新幹線の中で視聴した。

インビクタス。

南アフリカ共和国のラグビー・ワールドカップをめぐる実話である。

監督は、巨匠クリント・イーストウッド。

名作の誉れ高い作品であったが、見そびれたままだった。

車中、周囲の乗客に涙を見られないように、大変な思いをした。

おっさん公衆の面前で泣くもんじゃないよ、である。

面目ない。

というか、普通に部屋の中で見ればよかった。

クリント・イーストウッドはやはり偉大だ。

以下、内容に言及しますので、あらかじめご了承ください。

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職人監督

実話をベースとして、たんたんとあくまでたんたんと物語は進む。

題材そのものが劇的であるがゆえに、過剰な演出は一切排除されている。

そこが、イーストウッドらしいといえば、らしい。

必要以上に盛り上がりを誘うようなシーンもショットもない。

伏線を四方八方に張り巡らし、回収しようという意志も一切ない。

そこが、うるさくなくて良い。

抑えた演出、抑制された演技。

一例として、批判的なスポーツキャスターの扱いがある。

彼は終始、ナショナルチームに批判的である。

凡百のディレクターであれば、優勝インタビューの際に皮肉の一つやくすぐりなどを放り込みたくなるものだ。

が、そのような稚技を一切施さない。

これが実に心地よい。

さすがです。

さりげない仕掛けの数々

しかしながら、映画である限りはそこには映画的仕掛けは不可欠である。

たくさんあるのですが、以下2つだけ。

スタジアムの入り口で黒人がフェイスペインティング商売の呼び込みをしている。

その脇を白人中年が、うせろ、と吐き捨てながら通り過ぎる。

ここには白人と黒人との融和がまだまだ道半ばであることが表現されている。

そして、ナショナルチームが世界一になった瞬間に、警護主任の黒人に抱きつくのが、先程の中年男性なのだ。

国威発揚としてのスポーツの効能がここで端的に表されている。

と同時に、真の融和などまだまだ先であることも示唆されている。

同様の距離感と一時的融和感はスタジアムの外においても描かれる。

スタジアムに入場できなかった貧しい黒人少年は、警備のパトカーから聞こえてくるラジオに耳を傾け、試合の行方に一喜一憂する。

場面が変わるごとに、少年はボンネットの上に座っていたり、警官に買ってもらった炭酸飲料を飲んでいたり、段々と距離が縮まっていく。

優勝の瞬間は、爆発的な喜びの中、警官に胴上げされている。

ちなみに、有名なシーンである、2001年の9・11を想起させるスタジアムの上ぎりぎりを飛行する航空機の演出は実話に基づいているらしい。

そこにいろいろな意味を読み取る批評家も多いが、特に何かが込めれれているようにはわたしには思えなかった。

機体の腹部に「頑張れボカ(ナショナルチーム名の略称)」とペイントされていることを知らされたときは素直に興奮しました。

マンデラとフランソワ

この映画は、リーダーシップの物語でもあります。

大統領ネルソン・マンデラとラグビーナショナルチームの主将フランソワ・ピナールのふたりが織りなすリーダーによるリーダー育成の物語であるとの解釈が成立するでしょう。

残り時間が少ない中、追い詰められた南アフリカ共和国チームは円陣を組み、フランソワは鼓舞する。

チームを、そして自分自身を。

頭を上げろ

俺の目を見ろ

聞こえるか?

祖国の声を聞け

このセリフを聞いたとき、涙腺は決壊した。

気の利いたセリフから遠い、ごくごく平凡な短い語句。

けれども、これこそが魂を起動させる真実の叫びにほかならない。

勝利の後、民衆でごった返すなかを大統領の車はゆっくりと前進する。

ボディーガードたちが若干いらつくなか、それを察したマンデラはおもむろに口を開く。

ゆっくり行こう

急いでおらんよ

27年間ものあいだ投獄されていたマンデラの口からこぼれ落ちるこのセリフは人命の如く重い。

祖国を再起動させる天命を知る政治家にとって、ワールドカップ優勝は出発点にすぎない。

融和の道筋がついたというだけで、道のりははてしなく遠い。

アパルトヘイトの真実が描かれていないなどの見当違いの評論も目にする。

が、クリント・イーストウッドは、政治家ネルソン・マンデラの覚悟をスクリーンの随所に結晶させている。

エンドロール

エンドロールが素晴らしい映画はそんなに多くない。

本作は数少ないうちの一つだ。

エンドロールにおいて、本物のナショナルチームメンバーの映像を織り込んでいる。

それがまた実にナチュラルなのだ。

最後の最後に、黒人の少年たちがラグビーに夢中になっている姿が描かれる。

これは、もちろんオープニングのアパルトヘイト政策の落とし子である、黒人は裸足でサッカー、白人はシミひとつないユニフォームを着てラグビーのコントラスと対をなしている。

黒人だけでラグビーをしているところ、この道半ば感が、イーストウッドらしさといえばらしさになるだろうか。

いい映画だった。

できるだけ多くの人に見てほしい作品です。

水たまりの一滴

マット・デイモンの最高傑作なんじゃないかな。

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