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現役人事部長の 雑記blog

同一労働同一賃金を職務給、職能給から今一度みる

投稿日:2017-02-11 更新日:

 

同一労働同一賃金の正しい議論のために⇒

先週、大内伸哉氏の「AI時代の働き方と法」を読んでいて、同一労働同一賃金について少しばかり触れていた箇所が気になりました。

本日はそのことについて、お話します。

「AI時代の働き方と法」は人事屋にとって必読書ですね。

考えさせられることのオンパレード。

まだの方は、手にとって是非ご覧下さい。

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契約の自由性

大内氏は、同一労働同一賃金は、契約というものの考え方とそぐわないものだと言います。

本来、賃金は契約によって自由に決めることができるものだ。たとえ同一の労働をしていても、異なる賃金を契約で定めることは、それが望ましいかどうかはともかく、法的に許されないとする根拠は明確ではない。同一労働同一賃金となると、賃金を交渉によって決める余地がなくなってしまう。

なぜ、このように明言するかについては、前提となる説明が必要です。

なので、その点についてまずは説明します。

職務型の働き方

同一労働同一賃金が当然視される欧米と、そうではない日本では働き方の主流が違います。

大内氏は、欧米の企業の労働者は、仕事が忙しい時でも、互いにあまり助け合わないといいます。

なぜでしょうか?

もちろん、個人主義が過ぎて、不親切であるからではありません。

助けを求めようなら、無能だから仕事をこなすことができないと評価されるおそれがあるし、また助けを求められた同僚が、仕事をうまく処理すれば、自分の仕事を奪ってしまうおそれもあるからだ。

このような労働観が広く共有されている理由は、彼らの働き方が「職務型」であるからです。

これが職務が限定されている、いわゆる職務型(ジョブ型)の働き方だ。労働者は、特定の職務での労務を遂行するために雇い入れられる(職務に人を配置する)。自分のやるべき仕事の範囲は、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で明確に定義されている。賃金は、その職務に応じて決まる職務給だ。同じ職種の範囲で技能を向上させると、従事する職務の水準が高くなり賃金も上がる。

このような働き方がスタンダードであるならば、同一の労働には同一の賃金を支払わざるを得ない。

ラーメンは500円、チャーシュー麺なら650円というように。

けれども、日本の会社員の多くの給与体系は、「職務給」ではなく、「職能給」を給与のベースとしている。

賃金も、労働者がどのような職務に従事したかによっては決まらない。職能給という職能資格制度に基づく格付けによって賃金が決まり、その格付けは、勤続年数に応じて上昇していく。だから、年功型賃金となる。年功型賃金は、特定の職務における技能ではなく、その企業における貢献能力(職務遂行能力)を評価して支払われるものだ。

キャリアを積んでいけば、いろんなことができるようになる(能力が開発される)という仮定に立脚し、毎年給与があがっていくイメージ。

ここまでを押さえた上で、もう一度はじめに戻りましょう。

性急な同一労働同一賃金論

日本でも正社員に職能給を導入すれば、おのずから同一労働同一賃金となる。逆に職能給を導入していないならば、同一労働同一賃金とする前提を欠くことになる。したがって、職務給以外のところで同一労働同一賃金の原則を論じるということは、同一の労働には同一の賃金を支払うという意味とは異なる内容のことを論じているとしか考えられない。

異なる内容についてはこれ以上言及されていませんが、大内氏がこの後、続けているように、「しかし世間ではそのように考えておらず」という理解不足が蔓延しています。

無理からぬ事です。

行政からの明示的な説明でもない限り、「職能給」と「職務給」の違いなど、人事部門関係者以外想像できるはずもありません。

同一労働同一賃金のその先

職能給の支払い対象とは、いわゆる総合職です。

総合職とは、どのような職務についても貢献能力の発揮を求められる総合的にポテンシャルの高い正社員を指します。

同一労働同一賃金が徹底されるならば、職能給から職務給への移行も止められないので、最終的には現行の総合職は廃絶されるのでしょう。

ということは、総合的な力を発揮する必要のない労働者には、限定的な労働に見合う限定的な報酬が支払われることになるということです。

多くを求められるわけではないので、明らかに年収はダウンします。

毎年の昇給ももちろん望めません。

職務給の考え方から、昇給は今まで以上のレベルを求められたときに、それに応えるパフォーマンスが出せた場合に限り実現します。

これにより、企業の人件費コストは一定程度抑制できるでしょう。

しかしながら企業統治上、企業活動上の必要から、総合的な判断のできる「新たな総合職」と、そのような総合職を中心とした「組織運営、業績管理のニューシステム」が何よりも求められることになるはずです。

同一労働同一賃金への本格化への舵きりは相当なインパクトを伴いそうです。

そして、忘れてならないのはAIが同僚になった場合、AI基準で賃金が決定される可能性が高まるということです。

「同一」のなかに、AIが入ることを前提として、同一労働同一賃金の議論がはじめられているのならば、今後相当深い議論が求められるのでしょうね。

今のところ、議論がどこまでの範囲を射程においているのかは皆目見当がつきません。

 

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同一労働同一賃金の実現によって、どんな労働の未来が待っているのか(まとめ)

 

水たまりの一滴

労働の時代がはじまりましたね。

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