キャリアは財産である。重要性がますます高まるキャリア論という考え方

投稿日:2017-02-20 更新日:

キャリア論⇒

「雇用政策とキャリア権」の著者である諏訪康雄氏は、1980年代の半ばよりキャリアをめぐる法的思考の研究を開始された、キャリア論の第一人者です。

大内伸哉氏の「AI時代の働き方と法」において触れられていましたが、折角の機会なので、その著作を読んでみることにしました。

本日は、諏訪氏が研究されてきたキャリア論について少しばかり書きます。

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キャリア権とは

定義について大内氏が「AI時代の働き方と法」のなかで簡潔にまとめておられますので、それを引用します。

キャリア権を一言で言えば、人々が職業上のキャリアを生涯にわたって展開していくことができる権利といえよう。

長くなりますが、もう少しつづけますね。

ところが、近年のように、終身雇用が徐々に崩壊し、一つの企業(ないしグループ企業)内で職業人生をまっとうすることが難しくなってくると、労働者にとって大事なのは雇用ではなく、転職も想定したうえで、職業キャリアを継続して発展できるようにしていくこととなる。このような考察に基づき、キャリアこそが財産であるという考え方を法的な権理論に高めたのが、キャリア権論だ。

働き方改革が推進されている現在、このような考え方が30年あまりも前に提唱され、その後研究され続けてきたことは、やはり驚くべきことです。

労働の歴史を俯瞰しながら、息の長い射程で論考が深く深く掘り下げられてきました。

従事する仕事や所属する企業組織に限定されることなく、連続性を持って職業生活・経験を総体的に捉まえる考え方は、キャリアデザインの思想と重なる部分も多いですが、 それが財産であり権利であるとするところにユニークネスがあります。

職務は財産、雇用は財産の時代

著者は、産業革命の影響のもとで「職務は財産」であるという思想が広がっていったといいます。

そして、その後の技術革新の連続の中で労働権が生まれ、「雇用は財産」という考え方が共有されるようになったと述べます。

だが、20世紀も終わりを迎えようとするころ、企業の場で今ある雇用をできるだけ保障しようとする「雇用は財産」戦略は、19世紀の「職務は財産」という戦略と同様に、変化の時代において、これを維持し続けることができるのか、また、それが適当か、という鋭い問いを突きつけられるに至った。雇用の流動化論である。

やがて、このような考え方の延長線上に「キャリアは財産」という思想は発見されることとなります。

行き着く先としてのキャリアは財産

発見の過程を今一度整理しておきましょう。

19世紀の「職務は財産」及び20世紀の「雇用は財産」のいずれにおいても、次の3つの考え方が根底にあったと諏訪氏は言います。

生活保障・・・生活を維持するよりどころとなる「財産」として職務や雇用は守られるべきと主張されてきた。

職業キャリアの保障・・・職務も雇用もキャリア形成と展開に密接に関係し、職務や雇用はキャリアを保障する場であった。

自己実現・・・人々は仕事を通じて成長し、自己を実現してきた。そのキャリア展開とは同時に自己実現の過程でもあった。

以上から、キャリアの保障を通じて、生活が保障され、また自己実現の保障がなされてきたという流れが違和感なく理解できることでしょう。

この考え方の延長に「キャリアは財産」という思想があることは半ば必然であったと思われます。

キャリア権の未来

キャリア権は、現在のところ、憲法に根拠を有する理念的性格の抽象的な権利であり、雇用政策や労働立法を導くプログラム規定にとどまり、いまだ実定法の根拠は乏しい。判例法理も未開拓である。

しかしながら、労働者の就労年齢が65歳以上が当たり前になろうとする今日、優良企業の平均寿命が30年より伸びてこない現状に鑑みるならば、働く者の権利として、このようなキャリア権の確立が急務であることは誰しも理解できるところであるでしょう。

だって、一企業にて勤め上げることは就労年齢の上昇によりほとんど無理筋になったのだから。

自分の身を自分で守らねばならないこれからの雇用環境において、職務も雇用もあてにならない条件下、キャリアの継続性や安定性を広く社会に共有させることの重要性はこれからますます高まっていくことでしょう。

終身雇用が当たり前でなくなり、副業兼業が当たり前になるこれからの時代だからこそ、断絶しがちな職業上のキャリアを生涯に亘って展開できる権利であるキャリア権は、われわれにとって必要不可欠の権利であるはずです。

 

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水たまりの一滴

馴染み深いキャリアについてあらためて考えさせられました。

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