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「ジョブ型雇用社会とは何か」正社員体制の矛盾と転換

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間違いだらけのジョブ型論を一刀両断!

濱口桂一郎氏は言います。

本書は、雇用システム論の基礎の基礎に立ち返り、ジョブ型とメンバーシップ型とは何であり、何でないのかを、分かりやすく示した上で、雇用労働に関わる様々な領域ごとに、世の多くの浅薄なジョブ型論者が見落としている重要なポイントを一つ一つ解き明かしていきます。

雇用システム論の根っこから物事を広く見直してみると、世の中の見方が変わるはずだと著者は断言します。

パドー

本書のページをめくり、そうだったのか!の快感をあなたも味わいましょう。

こんな人にオススメ
  • 人事部門
  • 経営層
  • 自分の働き方に真剣に向き合いたい方

本書の構成について

本書は全部で7つのパートから構成されています。

  1. 間違いだらけのジョブ型論
  2. ジョブ型とメンバーシップ型の基礎の基礎
  3. 入口と出口
  4. 賃金ーヒトの値段、ジョブの値段
  5. 労働時間ー残業代と心身の健康のはざま
  6. メンバーシップの周縁地帯
  7. 社員組合のパラドックス

ジョブ型とメンバーシップ型の違い

ジョブ型
メンバーシップ型
  • 職務を特定して雇用
  • 契約で定める職務によって賃金が決定
  • 職種ごとの賃金を決める労働組合は、職業別あるいは産業別の労働組合でなければならない
  • 職務を特定せずに雇用
  • 職務に基づいて賃金を決めることが困難
  • 労働組合は企業別に組織しないと機能しない

雇用システムのねじれ

我が国の法律は欧米と同じくジョブ型で構成されています。

しかしながら、実際の日本の雇用システムは全く逆の仕組みであると著者は指摘します。

簡単に言うと、日本の雇用システムと日本の労働法制の間にはものすごく大きな隙間が空いているのです。

隙間を埋めないと、世の中がうまく回りません。

その隙間を埋めているのが、裁判所の累次の判決に他ならないのです。

それらが積み重なって形成されてきた判例法理が埋めているにすぎません。

現実の労働法の姿を知るためには六法全書ではなく、判例集を見なければいけないのです。

今世紀に入りようやく、積み重なってきた判例法理の一部が労働契約法という形で実定法化し、六法全書に載ることになります。

日本の労働法はそういう大変複雑怪奇な姿になっているのです。

ジョブ型で採用の自由を捨てる覚悟が企業にはあるのか?

我が国において広範な採用の自由を認めた先例に「三菱樹脂事件最高裁判決」があります。

ここでは、(企業の)信条を理由として雇入れを拒否することを違法でもなければ公序良俗違反でもないと容認しています。

ジョブ型社会においては、あるジョブに一番ふさわしい人(あるジョブを遂行するスキルが一番高い人)が選ばれるのが大原則です。

つまり、一番適合する人の持っている属性(人種・性別・年齢・障害・性的志向など)が採用を妨げることがあってはならないのです(公共政策の観点からの差別の禁止)。

これがジョブ型社会の差別禁止の一丁目一番地です。

先に見た日本型の採用の自由は、ジョブ型社会における採用の大原則と正面衝突します。

採用判断の是非はそのジョブに適合する人を就けるという観点でのみ判断されるという事態を受け入れるつもりなのか、ということです。

ジョブ型における採用は覚悟が必要であり、日本でジョブ型をもてはやしている人たちはこの問題点をほとんど理解していないと著者は強調します。

我が国の多くの企業で実施されている採用の実態は、仕事をする人ではなく、仕事「仲間」を選ぶプロセスであることがよくわかります。

ジョブ型社会における解雇

世界で、

  • ジョブ型社会・・・日本だけ
  • メンバーシップ型社会・・日本以外

ジョブ型社会のうち、

  • 解雇規制なし・・・アメリカ合衆国だけ
  • 解雇規制あり・・・アメリカ合衆国以外

アメリカは確かに随時雇用原則といって、どんな理由であっても、あるいは理由なんかなくても、解雇することが自由です。

解雇規制とは解雇禁止を意味しません。

正当な理由のある解雇は問題なく有効なのです。

資格がすべてのジョブ型社会

ジョブ型社会は、フォーマルな教育訓練制度を修了することで獲得された資格でもって特定のジョブに就職する社会です。

逆にいえば、そういう資格がないゆえに就職できないというのが、欧米の雇用失業問題であり、それゆえにそれに対する対策は主として教育訓練制度に力を入れて就職できるような資格を与えることになるわけです。

日本の場合、仕事ができるできないは、資格を全面的に信用して判断するということが稀です。

資格イコールスキルという前提がほとんど疑われないで議論が進められる土壌では我が国の職場(社会)はないのです。

といいながら、物事はそんなに単純ではありません。

ジョブ型社会にも同様の問題が実はあるのです。

ジョブ型社会のアキレス腱

ジョブ型社会であろうとなかろうと、仕事のスキルは仕事を通じて学ぶことが一番効率的であるはずです。

実際に仕事をする上で使っているスキルの大部分は、フォーマル学習に基づく資格よりも、こうしたノンフォーマル・インフォーマル学習で身につけたものだという調査結果もあります。

問題なのは、ジョブ型社会は、このような資格なきスキルを素直に認めてくれるような仕組みではないことなのでしょう。

日本のようなメンバーシップ型社会であれば、このような「うるさい」事態は発生しないはずです。

ジョブ型社会ではそうはいかないのです。そう、ここにジョブ型社会の最大のアキレス腱があるのです。

ジョブ型雇用社会の真の理解のために

ここまで触れてきたところは、本書の第二章の前半にすぎません。

多角的な問題定義とその解説がそのあとも続きます。

興味のある方は直接本書に当たってみてはいかがでしょうか。

思い込みと忖度のはざまに隠された真実をここまであからさまにした論考は他に見当たらないと思います。

パドー

濱口さんの著作は常に多くの示唆に満ち溢れています。

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✒︎ この記事を書いた人

人事屋パドーのアバター 人事屋パドー 人事系ブロガー

都内に勤務の労働者。元営業マンの人事部長です。当サイトにて、人事・仕事・就活に関して書いています。あなたの悩み事の解決のヒントになれば幸いです。

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