将来の予測が極めて困難な状態の中で、こらからあなたは仕事を進めざるをえないのです
グロービス経営大学院で教鞭をとられている河野英太郎氏が書いた本書は、「VUCA時代の仕事のキホン」とは何かが具体的に解説されている良書です。
VUCAってなに?
VUCA(ブーカ)とは、
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
の頭文字をとった言葉です。
あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が次々と発生するため、将来の予測が困難な状態
を指す言葉となります。
世の中の仕組みやルールが目まぐるしく変わり、先行きの不透明感が強くなる時代にあなたは生きています。
このような「新しい現実」を前にして、現代のビジネスパーソンは2つのタイプに分かれると著者は言います。
- 周りの変化が、単に景色になってしまっていて、自分も変化しなければならないことを自覚できない人たち
- 変化に過剰に反応しすぎている人たち
- 前者は、昔と同じやり方で仕事を続け、新しい現実を直視しません。
- 後者は、革新的な働き方や考え方を性急に主張しますが、具体性や現実性をあまりに欠いています。
いずれにしても、ある種の思考停止状態に陥っていると言わざるを得ません。
そこで、河野さんは第三の道を提唱します。
これまでの仕事の形式を刷新しつつも、地に足の着いた仕事のやり方が求められている
なぜなら、
- 仕事の本質は大きく変わってはいないから
- けれども、その形式は大きく変わっているから
重要「仕事の本質」と「その形式」とのバランスをうまくとって働くことのできるビジネスパーソンこそが、これから先、大いなる成果を上げることができるのでしょう。
- 時代に遅れたくないと思っている方
- これからの仕事のやり方に悩んでいる方
- ここらで自分の仕事を棚卸ししたい方
4つの新しい現実に即して仕事のキホンが語られています
本書は4つの章から構成されています。
各章のテーマは次のとおりです。
- 第一章「限られた時間で成果を出す」
- 第二章「答えのない問いに答えを出す」
- 第三章「多様なメンバーをまとめる」
- 第四章「働き方の持続可能性を高める」
限られた時間で成果を出す
最小限の投資で最大の成果を出すための「生産性」アップのキホンについて解説されています。
答えのない問いに答えを出す
筋の良い解答を導くための「問題解決」のキホンについて解説されています。
多様なメンバーをまとめる
多様なメンバーをまとめる「リーダーシップ」のキホンについて解説されています。
働き方の持続可能性を高める
長く働ける自分をつくるための「自己投資」のキホンについて解説されています。
イノベーションという言葉に対する誤解
VUCAが語られるとき、
多くの場合は「イノベーション」という言葉がセットになって口にされます。
一般的には、イノベーションというと、非常に大きな変化をあなたも想像しないでしょうか?
改革や革命といった語句を頭に浮かべる人は少なくないはずです。
河野さんのとらえ方は違っています。
イノベーションは、小さな工夫の積み重ねからこそ生まれる
たとえば、30分かかっていたミーティングを20分で済ませる、とか。
小さな工夫を積み重ねることで、結果的に大きな変化がもたらされる。
河野さんは、このことが「現実的な」イノベーションの本質であると言います。
イノベーションは「日々の小さな工夫の積み重ね」によって成立しているのです。
ちなみに、イノベーションは日本語で「革新」などと訳されますが、アイビーリーグの大学の日本語学科で教鞭を執る、知り合いの米国人の方は、「イノベーションの訳は、「工夫」がしっくり来る」とおっしゃられていました。これを聞いたとき、とても納得した記憶があり、今でもこの考え方を大切にしています。
日本人と欧米人では概念が違っているようです。非常に興味深いです。
もうお分かりかと思います。
ここで言われている「小さな工夫」こそが著者が強調する「キホン」にほかなりません。
キホンを確実に実行する
「キホン」を確実に実行することの連続が、イノベーションの源泉であるという信念を私は持っています。
VUCA時代の今日、あなたの経験やスキルはすぐに陳腐化してしまいます。
あなたを取り巻く環境は思いがけない速さで複雑さを増しているのです。
「答えが明確に出ない」時代には、問題解決のアプローチも従来通りというわけにはいきません。
だからこそ、
小さな工夫を日々積み重ねていき、あなた自身のイノベーションを起こし続けなければならないのです。