法は言葉からできている
本書は、そういう人を主たるターゲットにして、法律学を学びつつ、日本語の文章作法を身に付けることを手助けするための(まさに一石二鳥をねらう)本にほかなりません。
法律の文章に関する書籍にビジネスパーソンであるあなたが向き合うことのメリットは、オフィスワークにおいて、文章作成・文章理解が極めて重要であるからです。
ビジネスライティング力を強化するためのひとつとして、法律に関する文章(文章作法)を学ぶことは、非常に有効です。
なぜなら、法律の文章は基本的に論理的に構成されているからです。
あなたが作成する文書において求められているのは、ロジックに他なりません。
ロジカルシンキングに基づくロジカルライティングを実践できるように、本書はあなたにとって頼もしい味方となるはずです。
- 法学部や法科大学院で学ぶ学生
- 文章力に自信のないビジネスパーソン
- 文書作成能力を問われている管理部門
本書の構成について
本書は全部で3つのパートから構成されています。
- 文章というものを考える
- 明確な文章を書く
- さあ、書いてみよう
法的文章に求められるもの
次の2つが求められます。
- 何よりも関係者の恣意、特定の当事者に都合のよい方向への操作を排除できるものでなければならない。
- 法的問題の解決に向けて書かれるものであり、したがって、法的な判断とその結論の合理化と正当化に役立つものでなければならない。
一読しておわかりのように、これは職場における業務報告の作成について、そのままに当てはまる「コツ」となります。
どこからが事実で、どこからが意見であるのかの線引きがなされていない報告が日々、オフィス内で大量生産されるなか、心に留めるべき「教訓」として、読み込むべき内容であるでしょう。
「法的」という語を「上司」に言い換えれば、よりすっきりとあなたにも理解できるはずです。
文を整える
次のように8つのポイントがあります。
法律文について書かれたものですが、一般的な文章作法のポイントと大きく変わるところはないです。
- 主語を明確に示す
- 長い修飾を独立させる
- 引用を独立させる
- 文を単位として修正する
- 係り受けに留意する
- 「てにをは」を的確に使う
- 接続表現で文をつなげる
- 端的に書く
文と文のつながりを自覚し、適切な接続表現を選んだ後は、接続表現でつなげた後の文に留意しよう。接続関係が整合するように文を作成しなければならない。
語句を整える
語句を使用する際は、次の3点に自覚的でなければ、文意が通りづらくなります。
- 語の意味範囲を自覚する
- 語のカテゴリーを自覚する
- 語の抽象度を自覚する
語を選ぶ際には、書き手の意図した意味の範囲と、読み手の想像するであろう意味の範囲とができる限り近くなるように留意することが必要である。双方が大きく異なったときに、誤解や混乱が生まれることになるのである。
語句に着目した文章作成技術とは
次にあげる5点に注意しましょう。
- 概念を一貫して使う
- 指示代名詞を置き換える
- 「こと」「もの」を特定する
- 「の」を特定する
- 「を」「に」「は」と「について」を区別する
要するに、「~を述べよ」は、対象そのものを問題にしており、「~について述べよ」は、対象に対する感想や評価や解釈を問題にしているのである。対象そのものと、対象に対する感想や評価や解釈は、まったく次元の異なる世界である。
これを読めばあなたは「当たり前」と思うかもしれません。
しかしながら、あなたの書く文章の中に、正しく反映されているとはたして言いきれるでしょうか?