組織の全体主義や理不尽などにじっと耐えているだけではあなたは生き残れない
その著作が多すぎて知らない人がいない売れっ子の佐藤優氏がこれからの時代の「働き方」について書いたのが本書となります。
本書の目的は、我々一人ひとりを取り巻く働き方をめぐる問題を現実的にとらえ、解決の方策を見出す視座を育成することだ。
最強の働き方とは、
- 働きすぎないこと
- 余暇の意味を捉え直すこと
となります。
朝日カルチャーセンター新宿教室での連続講座をもとに、再構成・加筆された内容であるために、語り掛けるような口調の表記スタイルがとられています。
お話を直接聞いているような感覚で読みやすい。
現在の社会情勢のひとつひとつに触れながら話が進むために、各ポイントについては具体的なイメージがつかみやすくなっています。
話される内容はあなた自身を取り巻くシリアスな労働環境であるにもかかわらず、落語を聞いているようなテンポの良さで、240ページあまりがするすると終ってしまうに違いありません。
内容が終始、暗みを帯びたトーンであるのは、佐藤氏が悲観論者なのではなく、現実が悲観的様相を呈しているためです。
そのような現実にあって、誰かを呪っていてもどこにも行けないことが、非常にクールに説明されています。
現状認識の交通整理には、もってこいの書であると思います。
- 佐藤優さんのファン
- 自分を取り巻く現状を整理したい方
- これからの働き方に大いに関心のある人
本書の構成について
本書は、全部で6章から構成されています。
- 働きすぎてはいけない
- 職業の選択を間違えてはいけない
- リスクは誰にでも襲いかかる
- 会社を辞めてはいけない
- 仕事だけしていたら孤独が待っている
- 仕事の目的は休むことだ
念頭に置く2つの論理
私が働き方について論じるときに、常に念頭に置いているのは、2つの論理だ。
2つの論理
- マルクスが資本論で説いた経済の論理
- 聖書の論理
マルクスの言う経済の論理に基づき
人類が存続する限り、機械がどれだけ発達しても、人間と自然の代謝は続くのである。この「代謝」をマルクスは「労働」と呼んでいる。したがって、労働も永遠に続くことになる。人間は、自分が生活できる以上の価値を労働によって作り出すことができる。この労働価値説の原則を理解していれば、人類の将来を過度に悲観する必要はない。
聖書の論理に基づき
カトリック神学者ヨゼフ・ピーパーの言説にある「休むことの重要性」に気づくべきである。 神の基準は、人間の経済合理性的な発想とは異なっている。我々一人ひとりは、十分な生活ができるように神から力を授けれらている。人間は互いに助け合って生きており、自分が優先的な時もあれば、そうでない時もあるだろう。このような考え方に立てば、人生が楽になる。
働きすぎてはいけない
最強の働き方とは「働きすぎてはいけない」という結論になります。
それは聖書の原典にかえりましょうということ。
直感的に理解できる「働きすぎてはいけない」というメッセージを聖書という理論的根拠を明示しながら解き明かしています。
特に、余暇についての考察は興味深いです。
余暇について今一度考えてみましょうと、ヨゼフ・ピーパーの「余暇と祝祭」を引用しながら、じっくりと解説されます。
いまさら言うまでもなく、
働きすぎてはいけないのは、もちろん心身の健康を脅かされるからです。
つまり、
あなた自身があなたの人生を棒に振ってしまうからなのです。
本書において、マルクスの解釈に立ち、佐藤さんは労働を「人間の属性」とみなします。
ゆえに、
働くことは、人間が人間としてある限り避けては通れないものと言えるでしょう。
働くことはあなた自身の「一部」としてあなた自身を確実に構成していますが「全体=人生」ではありません。
働きすぎてはいけない
普段、あなたが聞き慣れている言葉の意味が違う光を放ちます。
あなたの生活を、人生を見直してみるために、本書のページをめくることは絶好の機会であると思います。
ここでは深く立ち入りませんが、人間の属性としての労働という理解には、労働と労働力の差異に注目する視点が必要となります。