社内の便利屋が最強の分析チームになるまでの挫折と成功の軌跡
大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長の河本薫氏は言います。
本書には大阪ガスのデータ分析専門組織であるビジネスアナリシスセンターについて、立ち上げから今日に至るまでのストーリーを、生々しい話も含めて盛り込みました。データ分析で会社に貢献する組織になるため、私たちが何を考え、どう行動してきたのかを網羅したつもりです。
大阪ガスに固有の話という記述ができる限り避けられ、広く一般化して整理されているために、あなたの会社にとってもたくさんのヒントが散りばめられた一冊であると思われます。
- 企業内の情報統括部門
- 経営者
- 業務革新推進部署
本書の構成について
本書は全部で7章から構成されています。
- ビジネスアナリシスセンターの実像
- 四種類の「人の壁」を乗り越える
- 事業部門から信頼と予算を勝ち取る
- 分析組織は経営に必ず貢献できる
- メンバーの幸福を勝ち取る
- 十八年かけて築いた三つの無形資産
- 分析組織のリーダーに求められるもの
データ分析専門組織を十分に機能させるために越えなければならない壁とは
その壁は、知識や技術の壁ではありません。
人に働きかける壁です。
具体的には次の4つとなります。
- 事業部門と連携する壁
- 会社の経営に貢献する壁
- 分析組織のメンバーを育てる壁
- モチベーションを維持する壁
事業部門と連携する壁
なぜ、報告会ではすごいと思えた分析結果が意思決定には役立たないのでしょうか。最大の理由は「役立てようとする意図」を持って、データを分析していないからです。
「すごい」と「役立つ」の違いを常に意識することで、「生きた」データ分析が実現されるのでしょう。
会社の経営に貢献する壁
特定の事業部門に閉じた世界でしか会社を見ていないと、その事業部門の支援はできても、会社の経営全体への貢献にデータ分析専門組織が機能しなくなってしまいます。
経営の視点を持つことで、課題の重要性を相対的に比較することができるのです。
分析組織のメンバーを育てる壁
価値観が手段に偏っているメンバーを見つけたら、その偏りを早めに修正し、役立つことを重視する価値観を併せ持つように仕向けなければなりません。
最先端の分析方法を試すことに主眼を置いてしまうと、役立つことが置き去りになりがちです。
モチベーションを維持する壁
分析組織は資格要件もなく、ロールモデルもいない。
メンバーの育成やモチベーションの維持は、本当に大きな課題なのです。
彼らのミッション
著者は自らの組織を次のように定義します。
データと分析力を武器に社内にイノベーションを起こすことをミッションとする組織
ミッションの達成のために、河本さんは常に次の5つのことを念頭に置き、業務に取り組まれています。
- 私たちの仕事は社内にイノベーション(業務改革)を起こすこと
- データと分析力は手段に過ぎない。使うけれども、手段にはこだわらない
- どれだけ素晴らしいイノベーションを考えても、現場が採用してくれなかったら無意味
- どういうイノベーションを起こすのか、どうやって現場(人)を動かすのかに知恵を絞る
- 成果はイノベーションの中身ではなく、イノベーションの結果のみ
このミッションに徹底的にこだわっているからこそ、行動の要所を押さえ、また失敗から学べるのだと思います。
3つのモチベーション
企業内で働くデータ分析者には、次の3つのモチベーションが必要であると著者は主張します。
- 挑戦するモチベーション
- 壁を乗り越えるモチベーション
- 継続するモチベーション
挑戦するモチベーション
できそうなことではなく、できたらすごいことに果敢に挑戦するモチベーションが大切なのです。
壁を乗り越えるモチベーション
周囲の期待に応えられない場面は日常茶飯事。
そのようなときであっても、「絶対にこの壁を超えてやる」という決意が大きなモチベーションに繋がるのです。
継続するモチベーション
データ分析は、同じデータを繰り返すことも少なくなく、惰性に流されることもあります。
そうならないために、もっと良いやり方を模索したり、データ分析をとことん突き詰めるといった前向きな姿勢が、継続するモチベーションとなっていくはずなのです。
芸術家と同じように、各メンバーには独りで一つの案件に挑む覚悟が要ります。しかも案件は思い通りに進まず、必ず壁にぶち当たります。それでも心が折れず、最後まで仕事を完遂するには、モチベーションの維持が大切になります。