適者開発日本型人事管理への変革
法政大学大学院教授の石山恒貴氏は言います。
本書では、タレントマネジメントと日本型人事管理の特徴、強み、弱みを分析する。
そのうえで、タレントマネジメントという考え方が、日本型人事管理において受容できるものなのか、その実態を分析し、今後の方向性について提言することを本書の目的とする。
タレントマネジメントという考え方は、人事部門担当者のなかでは全くの初耳ではないものの、十分に理解している人は決して多くはないはずです。
人事施策にタレントマネジメントの考え方を本格的に取り込んでいる企業も、現在のところごく少数であると思われます。
海外での成果を日本のマネジメントの土壌で活かすために、本書は交通整理の役割を果たしてくれることでしょう。
タレントマネジメントを学ぶことは、期せずして、日本型人事管理の本質に迫る過程でもあるのです。
- 人事部門
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で9章から構成されています。
- タレントマネジメントはなぜ注目されるのか
- 日本型人事管理とタレントマネジメント
- タレントマネジメントとは何か、本書で何を明らかにするのか
- STMが機能する条件とメカニズムの解明
- タレントマネジメント施策に関する集団的認知と個人的認知の効果の検討
- 事例研究① サトーホールディングス
- 事例研究② 味の素
- 事例研究③ カゴメ
- まとめにかえて
タレントマネジメントの定義
本書におけるタレント及びタレントマネジメントの定義は次の通りです。
タレントとは、
個性に応じた天賦の才能を有しながら努力してその開発を継続する個人であり、在籍する組織の環境に適合し貢献する存在を指す。
タレントマネジメントとは、
組織が、その競争戦略をタレント戦略に転換した上で、適者開発を前提として、タレントを引きつけ、開発し、留め続けることを指す。
10個の発見事項
分析結果を総合的に検討した結果、著者は、次のように結論付けます。
タレントマネジメントという考え方は日本型人事管理において受容可能であるが、その受容のあり方は多様である、と結論することができよう。
結論を踏まえ、次の10個の発見を列挙し、説明を加えています。
- タレントマネジメントと日本型人事管理は、対立構造にあるわけではない(適者開発日本型人事管理)
- 日本型人事管理におけるタレントマネジメントの受容には、類型がある
- 事業戦略からの人材像への落とし込みの重要性
- 信頼関係の構築
- 経営陣と人事部門の協働作業
- タレント選抜に関する顕在化された業績と潜在能力
- HRBPの果たす役割
- キャリア自律の重要性
- 企業文化としての多様性
- 外部環境の変化を織り込む
タレントをマネジメントする
タレント(才能・才人)をマネジメントする主体は2つあります。
タレント自身と組織(マネージャー)です。
タレントは、自身の才能の枯渇との戦いを未来永劫、強いられる存在です。
組織は、タレントが組織の発展と活性化に寄与するように、絶えずタレントの最大戦力化を迫られます。
タレントをマネジメントする2つの主体の行動がピタリと重なるとき、個人と組織の望ましい関係が実現され、企業価値が増大するに違いありません。