人材育成のプロとアスリートの対談には多くのヒントが詰まっていた
本書は、現在立教大学で教鞭をとる研究者の中原淳氏と3度のオリンピック出場経験を持つアスリートの為末大氏の対談集となります。
今を懸命に生きる30代以上のビジネスパーソンが、長期化する自らの仕事人生をいきいきと過ごすために役立てることのできるヒントが書かれている本です。
人生には一度や二度、必ず転機となるような出来事が訪れます。
それは、はっきりとした形をとって現れる場合もあれば、さりげなくあなたの目の前を足早に通り過ぎようとする場合もあることでしょう。
そのような出来事を確実にとらえて、いかにして自らをリセットすることができるのか。
それができるできないによって将来の成長曲線は著しく違ってきます。
本書では、仕事人生のリセットボタンに関する機微が書かれています。
リセットボタンということばを聞いて、あなたはゲームを連想するかもしれません。
幾度となくボタンを押した経験があなたにもあることでしょう。
思い出してみてください。
あなたは、なんのためにリセットボタンを押したのでしょうか?
ゲームをやめてしまうために。
違いますよね。それならば、電源をオフにします。
そうではなく、
リセットボタンとは、ゲームを再びはじめなおすためのボタンであったはずです。
ゲームを「仕事人生」にたとえるのならば、その途上において、「再びはじめなおすこと」を可能にするのが、本書でいうところの「リセットボタン」の含意です。
リセットボタンを押すからといって、ただちに現在の仕事を辞めることだと結論を急がないでください。
そうではありません。
リセットボタンを押すとは、
「現在の会社で働くことの意味や意義をいったん立ち止まって考えなおすこと」です。
一度きりの人生。一度きりの仕事人生。リセットボタンをうまく活用してみませんか?
- 転職を考えている人
- 現在の仕事で悩みを抱えている人
- もっと成長したい方
本書の構成について
本書は、全部で4章から構成されています。
- 右肩上がりの単線エスカレータ人生はもう終わり
- 勝てる傍流か、負ける主流か?
- 新たなスタートを切るために
- 自分の経験をリフレクションする
為末さんの競技人生、転機、その後につながっていく仕事人生について「自分年表」というツールを用いながら、振り返っていく対談となります。
「自分年表」とは、自分の仕事人生におけるさまざまな出来事を時系列で「見える化」し、それを振り返るためのツールです。
リフレクションとは
リフレクションとは簡単に言うと「振り返ること」です。
その振り返りとは、次の3つのアクションを繰り返す一連の行動を指します。
- 過去の見える化
- 意味づけること
- 未来づくり
第一ステップ
「自分のこれまで」を「見える化」する
第二ステップ
「見える化した自分の人生」をしっかりと「意味づける」
第三ステップ
「未来のアクション」をつくる
過去を見える化し、さらには意味づけること。過去を意味づけることで未来をつくること。
これがリフレクションなのです。
よろしければ、こちらもどうぞ(中原さんの著作のレビューです)。
リセットのためのヒント
次の5つがあげられています。ぜひご参考にしてみてください。
第一章から
- いまの時代状況をしっかりと認識する
- 努力ではなく、成果を大切にする
- 自分の頭の上に「もうひとり」の自分をつくる
第二章から
- 勝てない分野ではなく、勝てる分野を選ぶ
- 経験を積むために、知らない世界に飛び込む
- 山頂に到達するためではなく、山登りを続けるために頑張る
第三章から
- 外の世界から見た「自分の価値」を知る
- 過去の失敗から学ぶ
- 自分を見つめ直すときは、「異界」に身を置く
第四章から
- 唯一無二の法則に頼らず、自分にあった法則を探す
- ピークの前に次に何をするかを考える
- 他の人を育てる気持ちを持つ
立ち止まって考えてみる
現在、
忙しさに流されて、じっくりと振り返る時間をあなたは持てないかもしれません。
でも、
振り返らないままでいるのならば、今の状況がこれからも続いていくばかりでしょう。
過去と向き合い、未来を構想する必要があなたには必要なのです。
為末さんは言います。
まずは、いま自分の置かれている状況を整理して、冷静にみていけばまだまだ変われる余地はあるし、希望もみえてくるはずです。明日はちょっとだけ違うことをやってみる。そうした中に、どこか折り合う場所があるに違いありません。
あなたの明日もきっと変えられるはず。