属人的組織風土の改善を目指して
岡本浩一氏と鎌田晶子氏は言います。
私どもは、実証研究によって、属人風土が強い組織や職場では、組織的違反が多く行われ、多く看過ごされていることを見出した。
このような組織を「属人的組織風土」と定義づけています。
その特徴は、提案や発言の正邪・当否の判断が、発言者が誰かによって大きく変わる点にあります。
たとえば、社長や部長の発言ならば、正しいと認識され、同じ内容であっても課長代理の発言ならば正しくないとみなされる非合理的な判断が働く組織を指します。
- 人事部
- マネージャー
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で9章から構成されています。
- 不祥事を生む組織風土
- 属人的組織風土とは?
- 産業界における属人的組織風土の影響
- 属人思考と組織的違反
- 属人思考と職場の特性
- 個人のバックグラウンドと属人思考
- 組織の属人度を測り、対処する
- 組織リーダーにできること
- 組織としてできること
属人思考とは
組織内において、物事を判断するとき、一般的には、「事柄」と「人的要素」の両方を勘案するものです。
たとえば、企画書の内容を吟味する場合、
- 事柄:この企画書は自社にとってプラスになるかどうか
- 人的要素:この企画は誰が提案しているのか(同時に誰が支持しているのか)
の2つの側面を踏まえて精査されるものです。
属人思考とは、
人的要素を重視する傾向が不自然に高いものの考え方です。
属人思考が浸透しすぎている組織では、たとえ職場に大きなプラスのある案件でも、「人」の問題が障害になってつぶされることがめずらしくない。
属人的組織風土(属人風土)とは
属人的組織風土とは、
属人思考が根強く浸透し、重要案件から日常の些細な事柄まで、いたるところに影響を及ぼすような風土を言います。
属人思考の蔓延による末期症状
属人風土の病巣が広く深くなると次のような諸問題が発生します。
あなたの組織も心当たりありませんか?
- 案件の細部に対する注意がおろそかになる
- 反対意見が躊躇される度合いが高くなる
- 意見の「貸し借り」が起こる
- 新しい分野での判断に間違いが生じやすくなる
- 誤りが正しにくくなる
- 対人情報への信頼過多が問題となる
- イエスマンが跋扈する危険がある
- 組織としての自己評価・現状認識が甘くなる
- 無理な冒険を生む
属人思考の浸透度を測る8つのチェックポイント
以下の8つとなります。
- 忠誠心を重く見る
- 上下関係において公私のけじめが甘い
- 「鶴のひと声」でものごとが決まったり、ひっくりかえったりする
- 些細なことにも細かい報告を求めすぎる
- 「偉業」が強調される
- 犯人探しをする傾向が強い
- トップが下位者の人間関係を気にしすぎる
- オーバーワークを期待し、評価する
予防的組織を目指して
組織的違反行為や不祥事を防止するための組織づくりとして、本書では次のような具体的な提案がなされています。
- 部署の呼称について見直す
- 席の配置や机、イスの形態を見直す
- 議事録・会議の形式を見直してみる
- 誰もが発言の自由を保障される制度を設け、浸透させる
- 2通りのプロセスによる意思決定を制度化する
- 個人の判断にも工夫を取り入れてみる
5番目の2通りのプロセスとは、
ひとつは、あえて関係者の対人情報(個人名)を除いた情報をもとに事柄の検討を行い、もう一方では、対人情報を含んだ情報を用いて検討を行うのである。